吉田山・茅野市民の森(南大塩

数年前の6月初め、小金沢連嶺を縦走して牛奥ノ雁腹摺山から初めて西尾根を下った。これはいい径だなあと思ったのはもちろんその樹林の雰囲気の良さで、ぜひもう一度と思って昨日はこの尾根を往復するつもりで計画に入れたのだったが、何を勘違いしたのか、新緑を楽しみに行くつもりなのに標高からするといささか早過ぎる。参加者も少ないし、それならわざわざ遠くまで出かけることもあるまいと近場でお茶を濁すことにした。

方向を変えて出かけたのは茅野の吉田山で、これまで冬に歩いたことはあったが、いかにも新緑が美しいだろうと思われる樹林の様子なのにもかかわらず、その季節には歩いたことがなかったのである。去年の冬に出かけたときには寒気が厳しかったので計画を途中で変更した。そのときの計画を復活させることにした。

実にさわやかな天気になった。我々の住処なら、別に出かけなくとも自宅の窓から外を眺めていれば充分に緑を楽しめるのだが、いかに美しくとも日常は日常なので、少しは違うところに出かけたいと思うのも人情であろう。

同じ標高なら茅野あたりの新緑はロッジ山旅より遅い。茅野市民の森の歩道は思っていたとおりの美しさだった。歩道がたくさんあるので、まだ歩いていなかった歩道を使った。どこでどう間違ったのか途中から道がなくなってしまったが、方向を定めて登って行ったらうまい具合に頂上三角点に飛び出した。

広大な頂上には桜が植えられているが花は終わっていた。サッカー場でもできるくらいに広いのに誰もいないときてはいささか寂しい感じもする。芝草の上でゴロゴロしてバカ話をしたのち帰路についた。

八千穂高原散策(松原湖)

去年の6月に八柱山に登った帰りにコゴミの群落を見つけた。去年はあらゆる植物が10日ほど早く成長した年で、すでに採りごろは過ぎていた。よし、ここには来年また来て収穫しましょうというのが昨日の計画になったのである。

それだけでなく、ここが健康山歩きのコースとして優れているのももちろんあって、しかもコゴミが採りごろならあたりの新緑は言うまでもなく素晴らしいに決まっているのである。

横山夫妻が木曜山行に参加するのは久しぶりだった。そして計画の日と横山夫妻の結婚記念日と山歩大介さんの誕生日とが重なったのはなんとも偶然で、しかもそんなお祝いの日にのんびり歩くには最適のコースときている。さらにはめずらしく木曜山行ご常連も都合がついて、近頃にはない総勢9人での出発となった。結婚記念日といってもそんじょそこらの記念日ではなくてなんと60年すなわちダイヤモンド婚だというのだからすごい。

これ以上さわやかな日もあまりなかろうという好日だった。八千穂高原の白樺の新緑は今しも盛りというのも変な表現だが、要するにもっとも初々しい色である。最近のわがお気に入りのコースは、急登はまったくない、地面は柔らかい、林の雰囲気がいい、人がいない、危険度ゼロという、願ってもない散歩道である。

お目当てのコゴミは、まだまだ先端が巻いたままの株が多かった。せっせと収穫して各々袋をふくらませた。コゴミは冷凍保存もできるのでしばらくは食卓が豪華になるだろう。

収穫後は、道脇の適当な広場で輪になって、横山夫妻ダイヤモンド婚および大介さんの誕生日祝いをした。本来なら一杯やりたいところだがそれは我慢して、皆が持ち寄ったさまざまな甘味で乾杯した。標高1700m、快適な新緑の宴会場だった。

今年はまだカッコウの声を聴かないねという話をしていたら、カッコウの奴、どこでそれを聞いていたのか下山途中には啼き出したのである。なかなか気の利くカッコウである。

というわけで、実にケッコウな山歩きでした。

大室山~野尻高原(鳴沢)

一昨年の秋の木曜山行で、長尾山とその付近の富士山の側火山を探ってみようと出かけたが、長尾山だけ登って、大室山に行先を変えてしまった。https://yamatabi.info/2017i.html#2017i1

その行程がとてもよかったので、やはり大室山は新緑に限ると、去年はそれまで大室山の北半分しか歩いていなかったのを南側も探ってみようと出かけ、またまた新たな魅力を発見したのだった。https://yamatabi.info/2018e.html#2018e3

今年の計画を考えているとき、ロッジのご常連、富士宮のFさんが大室山に行きたいと言っていたのを思い出した。3年連続ではとも思ったがその気になったのは、長尾山の西麓に大草原があるのを航空写真を眺めていて気付いたからだった。

調べて見たら野尻草原というれっきとした名前があって、私が寡聞にして知らなかっただけのことだったのである。もっとも、人の出入りが多いところではもちろんないらしい。そこで、この草原歩きを組み合わせたらさらに楽しいコースになるだろうと思って今年も計画に入れたのだった。そしてその通り、実に変化に富んだ楽しいルートだった。もっとも、最初と最後には勘違いをやらかしていささか時間を食ったが・・・。

勝手知ったる精進口登山道に入ると、おびただしい倒木が道のわきに片付けられていた。空がやけに広い。去年の台風の被害らしいが、まるで恐竜でも歩いたあとのように道の両側の木々がなぎ倒されていた。風の通り道にあたったのだろうか。しかしそれもあたりが溶岩の上に育ったうっそうとした樹海になるまでだった。密集した樹林帯には風が入らないのだろう。

ひとつ先の分岐で曲がるつもりだったのを間違えて手前で曲がってしまったのがまず最初の勘違いだった。ままよと道なき樹海を横断することにしたが、これは怪我の功名というやつで、さまようがごとく樹海を歩くことはなかなかできない。天気でも悪かったら気味の悪い樹海も、空が明るいので楽しく歩くことができる。

大室山の斜面に突き当たると地面と樹林が画然と変わるのがこの山歩きの面白いところである。あとは何度味わっても飽きることのない美しい新緑の樹林をひたすら味わった。

この上なく美しい奥座敷でたっぷりと昼休みをしたあとは、方向を定めて下り、しかしこれもあとで考えたらもう少しルートの取り用があったとも思うが、まあ、それでも野尻草原にたどり着いた。山の上では半分以上雲に隠れていた富士山はほぼ全容を見せていた。暗い樹海の真横に明るい草原があるのが何とも面白い。なんだか童話で読んだようなシチュエーションである。草原に住む家族の親が子供に、「あの森に入ってはいけないよ」。

富士山が視界になければまるで霧ヶ峰でも歩いているような草原だった。これはいいなあと感嘆しきりである。ところどころでズミの咲く高原を歩いて、あとは出発点に戻るだけだったのが、最後の最後で方向を見誤った。そのおかげで1時間近くをロスしてしまったのは申し訳なかった。久しぶりに狐に鼻をつままれたような気分がしたが、なるほど答合わせをしてみたら間違いがはっきりとわかった。要するに縦横無尽に通じる作業道と車道に惑わされたのだった。それはそれ、これはぜひともまた出かけたいコースである。

倉沢山・塩水山(川浦)

横山厚夫さんの『一日の山・中央線私の山旅』(実業之日本社)を読んだのは、私が山歩きを再開した87年だったが、その一項にある「倉沢山の三角点峰」を実際に登ったのは7年後の94年のことだった。それだけ年数がたっていたのは、こんなマニア向けの山に登るには、少々修行が必要だったということだろう。

この、今では塩水山と呼ばれることの多い山を、そのときは北側から往復しただけで、地形図にある倉沢山までは行かなかった。車を使えば短時間で済んでしまう山なので、なかなかそれだけのために出かけようという気にならなかったからである。しかし6年前の秋口に木曜山行で金峰山に出かけたとき、道路が通行止めで仕方なく小楢山に転進して、さすがにそれだけでは時間が余る。これは絶好のチャンスと皆さんをそそのかしてオマケのようにやっと登ったのであった。https://yamatabi.info/2013i.html#2013i3

ところが、これがオマケというにはもったいないような山で、ことに山の南側の樹林がすこぶる良かった。これは新緑のときにまた来なければなるまいと思っていたのが、もうそれから6年も過ぎていたのである。最近ではあっという間に数年が過ぎ去っていることが多い。

やっと計画に入れた今回、偶然にもこの山のことを教えてくれた横山夫妻がご一緒してくれることになったのだからその奇遇にはあらためて驚かされる。本に書かれていたのは37年前の山行で、当時は大伐採ですこぶる展望のいい山だったらしいが、その展望は今いずこ、しかし代わってなんとも美しい林が拡がっていた。

ことにご神木にでもなりそうなミズナラの大木が多いのには目を見張らされる。至るところで水がしみ出しているような湿潤な地面のせいだろうか。ミズナラは芽吹きが遅いから、目に沁みるような緑が今しも盛りであった。ここにはまた来たいねという声がしきりであった。

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