44.向山      2007(平成19)年4月12日

「大多摩ウォーキングトレイル 全長7km 余沢・森林公園コース」と銘うつ、この山の中の遊歩道、「コブシの花がきれいですから」と岩瀬晧祐さんが車で連れて行ってくれた。今から13年前のことになる。その後、5年経った12年に岩瀬さんは亡くなってしまったが、この向山の写真を見ていると、いっそう、よい友を早くになくした寂しさが切実になってくる。岩瀬さんは山でも街でも抜群の友人だった。なお、岩瀬さんについては、本欄「横山厚夫さんのちょっと昔の山」の「その1 山梨県内を中心に 〔笹尾根 2009(平成21)年4月28〕」、さらには日本山岳会誌『山岳』第108年の「追悼」欄(横山記)を見ていただければ幸いである。
 
さて、この向山とは、奥多摩の三頭山から北西方向、余沢の集落に下っていく尾根上にある1077.8bの三角点峰である。遊歩道はその小峰を巡って作られ、登り口は集落の少し手前にある。ずいぶんお金をかけて作ったらしく、展望台とか東屋風の休憩舎もあるが、車でもなければ足場の悪い、こんなところまで来る人も少ないのではないだろうか。展望台もなんだか危なっかしくなっていた。また、指導標にしても、作ったご当人だけに分かっていて、肝心の来訪者には分からない不得要領の表示だった。しかし、岩瀬さんの云うとおりに満開のコブシの花は実に見事で、その下での昼食とおしゃべりがとても楽しかった。「岩瀬さん、いいところへ連れてきていただいて、ありがとうございます。今日はほんとによかった。大満足です」。
 
その後7年たった2014年の4月23日、岩瀬さんとコブシの花を忘れかね、歳若い近藤雅幸さんの車に乗せてもらって向山を再訪した。山田哲郎さんも同道だった。この年は春が遅く、コブシの花も、まだ、五分咲き程度だった。また、遊歩道は前よりは痛んで崩れたところがあったし、前回無理して登った展望台も傾いていて、今はとても登るどころではなかった。それでも、いろいろ思い出しながら歩けば、岩瀬さんの在りし日を偲ぶのにはなんの不足もない。「近藤さん、こちらの願いを聞いて車を出してくれて、ありがとう。今日も大満足です」だった。  (2020.5.20)

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