岩戸山
   1983(昭和58)年2月26日

近藤恒雄さん(1902~1993)は東京商科大学(現・一橋大学)山岳部では、望月達夫さん、柿原謙一さんの10年ほど歳上の先輩になり、また、本欄「五社山、三大明神山」に出てくる村尾金二さんとはコンチャン、ペンチャンと呼び合う無二の親友だったと聞いている。私は望月さんを通じて知り合い、この岩戸山のほかには雲取山、笠取山、石老山などに同行した。

近藤さんは1930年入会の日本山岳会の古い会員でもあった。『山岳』(第89年/1994年)に望月さんが書く追悼文の一節には「日本山岳会では役員などの経歴はなかったが、会員の中に何人かの親しい友人をつくり、その人達との山歩きや付合いを終生楽しみ、大切にした。他人に対しては、肌理(きめ)細かい愛情を示し……」ともあるが、まことにその通りであって、私も一緒に山を歩くたびに、「あぁ、近藤さんって、いいお人柄の方だなぁ」の思いを強くしたものである。いつもにこにこ、穏やかな話し振りだし、それに「ちょっと疲れたから」とブランデーを一口すすれば、たちまちのうちに元気を取り戻す方でもあった。

なお、箱根の一角にあって、東海道線の湯河原から登る岩戸山は高さ734㍍、大磯にお家のある近藤さんにとっては、ほんのご近所の山だったに違いない。ちなみに大磯から湯河原までは、わずか40分たらずの乗車時間である。


(2014.4)

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