瑞牆山展望歩道(瑞牆山

名古屋のやまんばさんご一行、多少は移動も自由になって、今年初めてのご来館である。行きがけには篠ノ井線廃線歩きで、好天の安曇野風景を堪能し、さらには思いもかけなかった福寿草の大群落も見ることができたという。

さて参加するつもりの木曜山行は例によって行先が決まっていなかった。山行後に帰名するには諏訪方面がよかろうかと思ったが、初日に北アルプスをたっぷり見たのだし、あいにく予報は曇りでそれ以上の遠望はないだろう。それならと地元の山を歩くことにした。

参加者全員が初めてだというので選んだのが瑞牆山展望歩道であった。かの伐採地の大展望もさることながら、とにかく径の状態がよくて足元が気持ちいいのが何よりである。瑞牆金峰の展望はもちろんのこと、枝越しではあるものの、八ヶ岳、南アルプス、最後にはすっきりと富士山まで眺められるのだからぜいたくである。そのうえ、まず誰もいないときている。

雲は多くとも肝心の展望は期待どおりで、遠路の客人をがっかりさせないですんだのは幸いだった。

七面堂から妙法寺へ(鰍沢)

先週、身延山の帰りがけに初めて桜で有名な大法師公園に立ち寄って、いかにも観光地然とした雰囲気に、ここはもういいなと思ったのだったが、そのときは予定になかったので地形図を持っていなかったのが、帰ってから周辺を仔細に調べると、がぜん興味深いプランを思いついた。

どうせならまだ桜が残っているほうがいいし、5月ともなれば他に歩くべき標高の山がいくらでもあると、さっそく今週の木曜山行の計画としたのだった。

具体的には鰍沢市街の南を東西に流れる南川をはさみ、妙法寺を中間点として逆コの字型に山稜をたどってみようというわけである。

早くも大泉の桜が満開に近い。こんなことは初めてで、標高に関係なく桜が一気に開花したらしい。たった1週間ぶりの鰍沢の山際はすっかり芽吹いていた。下から見上げる大法師公園の桜は半分くらいは散ってしまったのように見える。

時計回りかその逆か悩んだが、最後に大法師公園に降りてくる方法を選んだ。駐車場の関係で鰍沢市街地の南半を少し歩くことになったが、これはどこの地方にもありがちなシャッター商店街で、並行して高速道路と国道バイパスが完成したあとはなおさら、行きかう車も少ない。それでも短い距離のあいだに呉服屋が3軒もあったのには驚いた。富士川舟運華やかりしころの名残であろうか。

市街地はずれの七面堂の参道から山に入った。急な石段を登った上のお堂は立派なもので、船着き場を見下ろす位置でもあったのだろう。裏手には予想どおり古い径が残っていて難なくその上へも登っていけたが、これを歩く人なんて年に何人いるだろうか。

山巓には車道が通じて畑もある。さらには大規模なソーラー発電所が現われもする。なるたけ車道を避けて稜線上を歩いて行った。枝越しにまだ遠く、折り返し点となる妙法寺の三門が見えた。

途中、すばらしい新緑の稜線歩きを経て再び車道へ出、絵のような山村風景の中を妙法寺へと登って行った。何本かの桜がほぼ満開の高台で昼休みとした。集落のいたるところに桜が見え、庭庭のミツバツツジも満開である。

アジサイ寺として名前だけは知っていた妙法寺の立派な構えには驚かされた。鐘楼や三門の豪勢さは、日蓮宗で久遠寺に次ぐ格だと聞けば納得である。アジサイの時季には人出もあるのだろうが、駐車場などに、すばらしい桜が咲いているというのに人っ子一人いない。こういうのを見ると、花見客だらけの桜など見たくもなくなる。

門前町を下って、再び山に分け入ろうとするころ、足がおかしくなってきた。病気で3月から服薬を初めて以来、副作用で足の筋力が落ちている。山中で動けなくなっても困るので、タクシーが呼べるうちに撤退することにし、後半の計画をあきらめた。

予定より早く終わったので、帰りがけには盆地西側の高みをドライブして車中からの花見とした。桜のみならず、はやくも新府の桃まで満開で、花花花で終わった一日だった。
浅間山~桜峠(市川大門)

毎度書いているように、木曜山行の3月末から6月あたりにかけての目的は新緑探訪で、その後9月くらいまでは納涼となる。

浅間山を新緑の時季に歩いたのは去年が初めてで、その良さに打たれた。それで今年は去年より2週間は季節が早いから、さらに芽吹きは進んでいるだろうと、去年より1週間早い昨日、再び歩いてみることにしたのである。

気の利いた短編小説を年に一度は読み返すような山歩きである。天気は上々、思ったとおりの、山桜の白が混じる淡い新緑、そして今年はこれが最大の目的だったかもしれない上物のノビルの収穫。休憩と収穫で1時間以上を頂上で過ごした。

桜が散ったばかりの桜峠からは旧道を下って、滅多に人が見ることもない馬頭観音に久しぶりにあいさつした。前回、その下で倒れていた観音像を起したが、それは今回見ることができなかった。倒木がおびただしいので、下に埋もれたのかもしれない。しかし、どういうわけかこれまでは気づかなかった観音像にその下部で出会えたのはうれしかった。

山から下って、そのまま温泉へドボンというのがこのコースのいいところ。しかも山梨県一の展望風呂ときている。甲府盆地北半分の山々の展望を湯舟からゆっくり楽しんで、春爛漫の山行を終えた。

おっと、もうひとつ、収穫物を酒のアテに、Nさんとの夜の部があったのはもちろんのことで、どうやら敵は本能寺だったらしいのは秘密としておこう。

白山~637m峰(甲府北部)

去年の4月、要害山に登るつもりで出かけ、車が緑ヶ丘スポーツ公園にさしかかったとき、湯村山がなんとも美しい緑なのを見、急きょ予定を変更して、白山周辺を歩くことにした(参考リンク)。

一昨年にも同じ時季にこのあたりを歩いて(参考リンク)、つまり、新緑の甲府北山はわが定番のコースである。たまたま今年の『山と溪谷』3月号で白山あたりのガイドを担当したのはそれらの新しい経験があったからで、花の山という特集なら白花のイワカガミは紹介するに足りるだろうと思ったからであった。期せずして、自分の書いたガイドをさっそくなぞることになった。

去年よりは10日くらい早く行ったのは今年の季節の早さからだったが、それが当たったのと、そもそも今年はあらゆる花が良く咲いていることがあいまって、お目当ての白花のイワカガミが盛りだったのはもちろんのこと、全山がアオダモの清楚な白い花に覆われていたのがすばらしかった。

いい処は何度行ってもいいけれども、さすがにちょっと新味を加えたくて、今回は和田峠南東の637mピークを目標とした。これは昨日のコースでは最高点になるから都合がいい。30年も前から行ってみなければなと思いながら行ってはいなかった頂上である。

前日には26度まで気温が上がったという甲府盆地は、まるで雨上がりのようなさわやかな天気になって、ほとんど汗もかかないで歩けたのは幸いであった。目標のピークなどに行く人はあまりいないだろうが、そこそこの踏跡があって藪こぎをすることもなかった。むろん誰もおらず、さわやかな大気の中、里山らしく遠くに車の音をかすかに聴きながら昼休みをした。

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