小日向山(霧ヶ峰

例年、初夏ともなると中信高原へ出かけることが多くなるのは、低い山ではもう暑いからというのもあるけれど、商売用のワラビを山を歩きついでに収穫しようという魂胆もある。

それには5月下旬くらいには行かなければならないのだが、今年はちょっと出遅れた。でも、あの山ならまだ大丈夫だろうと出かけたのはおなじみの小日向山であった。もっとも、自分にとってはおなじみだが、一般的にはおなじみの山ではないので、当然人影を見ることはまずない。

行くたびに変わっているのは星糞峠付近の様子である。どうやら黒曜石に関わる展示施設ができるらしく、工事の現場事務所ができていた。いずれ電気も引かれるらしい。

毎度のルートもあたりの間伐が進んで、以前に較べて明るい林になっていた。林床を埋めたオニシダも陽当たりがよくなったらいずれ少なくなっていくかもしれない。

頂上に近いワラビ畑はすでに育ちすぎていたし、そのワラビもなんだかひょろっとしていて、かつての一級品の面影がない。こういったものも変わっていくのだろうか。しかし頂上一帯の原では採りごろのワラビがたくさんあった。レンゲツツジもまだ花を残している。

遠望こそきかないがそこそこの展望はある。何より風が心地よい。ワラビを摘んだり駄弁ったりで1時間近く昼休みをした。

車に戻って走り出したら雨がポツポツと降り始めた。先週に引き続いて運が良かった。

三峰山(和田・山辺・鉢伏山・霧ヶ峰)

朝は濃い霧で、雨滴もかなり混じっていた。昼には晴れ間も出るとの予報に出発したが、霧ヶ峰の一角にさしかかっても雨脚は弱まるどころか大雨と言ってもいいくらいの降りっぷりである。

これは予報がはずれたかと思いながら和田峠を通り過ぎたら不思議なことにぴたりとやんだ。道路も半分は乾いていて、このあたりではずっと前にはもう降っていなかったらしい。

しかし、雨には降られなかったものの、歩いている間中は霧は晴れなかった。展望の山でこれではもったいないが、まあ、ここが初めての人はいないし、すばらしい晴天のときに歩いたこともあるのだから、霧もまた良しと考えるしかない。

知らなかったクリンソウの群落も見られたし、風の強かった頂上では、大岩の陰にかくれて1時間近くも馬鹿話に興じながら過ごしたのもいい思い出になるだろう。

霧が晴れだしたのは下山後だったので、帰りは大門峠を経由して車窓展望を楽しむことにしたら、咲き残ったレンゲツツジも見られたし、行く手に富士山まで頭を出したのはオマケとしては立派なものだった。
カボッチョ(霧ヶ峰)

カボッチョへ行くのはほぼ3年ぶりだった。何度となく歩いたカボッチョは、歴とした径がないので鹿道を拾って適当に登るしかないのだが、ススキがまだ伸びていなくて、今までになく歩きやすかった。

晴れるとの予報も午前中は雲が多く、しかし陽ざしが強ければジリジリと肌をやく草原での行動も、ただ涼風に吹かれるのみの快適さだった。尻上がりに天気は良くなったが、頂上ではいささか涼しすぎる風が吹いていて、少し下ったところで昼休みをしようとは、下界では暑さにうだっているだろうに、まことにぜいたくなことではあった。

先般の霧ヶ峰外周コースでもそうだったが、毛虫の多いのには驚かされる。おとみ山にスマホのアプリで調べてもらうと「ヨシカレハ」という蛾の幼虫らしい。毒があるというので気をつけるべきらしいが、そんなものに構っていてはヤブは漕げない。委細かまわず突進した。しかしちょっと異常な発生なので、この手の虫が苦手なら楽しめない夏ではあろう。毒毛に刺されるとあとがひどいというので、訪れる人も肌はなるたけ露出しないに限る。

なお、カボッチョは地形図では「ガボッチョ」と書かれているが、霧ヶ峰に精通した手塚宗求氏の表記をとって「カ」は濁らずに書いている。山名の由来については難しいが「株っちょ」と考えれれば納得できる。

小沢根の頭(和田)

6年前の秋、扉峠北にある「風越」という名前の三角点のある突起に横山夫妻と登ったとき、目の前に見える笹原のピークに、あそこは良さそうじゃないですかとさっそく登路を調べて翌日に出かけた。これが滅多にないほどのいい場所だった。調べて見たら「小沢根ノ頭」という名前があるらしい。小沢根川の源頭の山にある意であろう。

お気に入りの山がまた増えたというわけで、それから数回は訪れているが、いささか遠いのが難点、しかし新山旅号の初山行となれば、高速道路からカーブの連続した急な山道まで、変化に富んだ車道をすべて試すことになって乗り具合をみるには最適である。

今週の山行には名古屋のやまんばさんご一行も参加することになっていて、ご一緒の方の年齢を考えても小沢根ノ頭は手ごろな計画に思った。

問題は天気だった。前日、名古屋駅まで行って中央線が大雨で不通になっているのをその場でバスに方法を切り替えて執念でやってきたやまんばさんと、そのご友人ふたりが大雨警報が出ている中を遠路からロッジ山旅に集結したのである。早朝には名古屋のNさんまでがやはり大雨の高速道路を飛ばしてやってきた。

こうなりゃ雨でも出かけるしかない。地元勢、カボッチョの3人がそれに加わった。しかし朝方やはり無情の雨。

ところが佐久平まで行くと道路は乾いていて雨はとっくにやんでいた模様、これはラッキーかと思ったのもつかの間、登山口に近づくにしたがってまた空は暗くなり雨粒が窓に当たるようになった。風も強まっている。

さて詳細はもう省こう。小沢根ノ頭の最後の登りにかかったとたん、美ヶ原本体がまず現れ、それまで五里霧中に近かったのが、みるみるうちに四囲の山々が見えだしたのである。やまんばさんとNさんは稀代の晴れ女らしいのだが、なんたる力業か。ついには遠く八ヶ岳までが全山姿を現した。すごいねえと長く休んだのは言うまでもない。

下山後、大門峠を越えての帰り道でまたすっかり雨になったのだから、実に幸運だったというしかない。

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