かき・さざんか
 
 
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かき(柿)は、わが国の山地に自生していたとされ、それが各地で栽培されて様々な品種が作りだされて日本を代表する果実になった。

いつも、かきと簡単にいっているが、正しい和名はカキノキで、なぜ、そうなったかは判らない。

晩秋、初冬に里近い山を歩くと美しい実をつけたかきの木を見ることが多い。

しかし、それはしばしば渋柿であったり、甘く程よく熟したものは烏や猿に先を越されていて、めったに私たちの口にははいらない。

でも、かきの木は実ばかりではない。その葉の新緑は「柿若葉」と初夏の季語になるほど美しいし、若葉を天ぷらにして食べることもできる。

そして、秋には、柿の葉ずしの包材として最適になる。

奈良、吉野の名物「柿の葉鮨」は、青い葉に包まれているので、柔らかい若葉を使っているのだと、わたしは長く思っていた。ところが、若い葉は生長のための熱を持っていて、予め冷やしておくなど手間がかかるのだという。色づく頃の葉は、きれいに洗うだけでよく、手にとってみると上質のスウェードのような柔らかい感触である。

ご飯にすし酢を混ぜてすし飯を作り、大人の親指より少し小さいぐらいに握る。その上に好みのたねを乗せてかきの葉で包み、適当な器にきっちり並べて詰めていく。詰め終わったら落し蓋をして重しをかけてひと晩置けば出来上がりだ。

奈良の「柿の葉鮨」は鮭と鯖が定番だが、わたしはスモークサーモンとケッパー、焼豚と辛子、薄焼卵など好きなものを乗せて作る。

また、柿の葉は健康によいといって、日常、お茶仕立てにして愛飲している人もいる。

 
 
さざんか(茶山花)は、日本では漢字をそのまま読んで、さざんかだが、中国では茶梅がさざんかを指す名で、茶山花はつばきのことをいうのだそうだ。いっぽう、日本でつばきを指す椿は、中国では全く別種の木という。

もともと、わが国の西南部の地方に数種の自生があり、それが栽培によって品種がふえて、花の形も色も様々な変化を生んで、観賞用に庭に植えられたり垣根に仕立てられたりするようになった。

つばきよりは寒さに弱く、植栽の北限は東北南部だとされている。

食用にするには白かうす色の花弁を、酢を落とした湯にくぐらせ水にとってから甘酢に漬ける。酢のもの、和えものに混ぜたり、添え物として使ってもよい。

柿の葉ずしを作るのと同様に、すし飯を小さい丸形ににぎり、さらに中心をくぼませる。この周囲に、くぼみを中心にして放射状に花びらをまとわせ、上のくぼみに甘めのいり卵を乗せると、さざんかずしの出来上がりだ。柿の葉ずしとさざんかずしで華やかなお膳になる。

さざんかについては、『摘菜のごちそう』(平谷けい子/山と溪谷社)を参考にした。 


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