くわい・ふくじゅそう
 
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くわい(慈姑)は、太い芽がついていることから、めでたさを表すものとして、正月のおせちによく入れられる冬の食べ物だ。

オモダカなどの仲間で、水田で栽培されているのが普通だ。

少々えぐ味のある味は好き嫌いの分かれるところだろう。うす味の含め煮などが普通の料理法だが、ごく薄切りをから揚げにしたくわい煎餅もおいしい。

先日、滋賀・京都で育ったという映画監督で俳人でもある吉村公三郎の『味の歳時記』(岩波/同時代文庫)を読んでいたら、昭和の初め、彼が少年の頃、北山の小川によくくわい採りに行ったと書いてあり、野生のものを採ることができた時代があったのを知った。

わたしは、あの外皮の独特な青色が好きだ。

 
 
ふくじゅそう(福寿草)も、正月に寄せ植えなどで飾られる花だが、もともとは日本原産の野草で、春早く、立春(旧暦の正月)の頃に咲くので元日草の名もある。

黄金のように輝く花を喜ばれて、人手をかけて育てられるようになった。江戸時代には園芸的に作りだされた銘品が、いま以上に数多くあったらしい。

寄せ植えなどに仕立てられたものは、葉が開かないうち、苞葉に包まれた茎が少し伸びた先に丸く開いた一花をつける。野外の自生のものや、庭におろされた株は、東京辺りでは2月末か3月初めごろ切り込みの多い葉が開くとほぼ同時に、細い茎の上に花が咲くので、鉢植えのものとはかなり姿が違っている。

秩父の四阿屋山など、地元の集客目的で手入れをされ、有名になった自生地もあるが、わたしは長野の戸谷峰で群落を見たことがある。ただし、最初のときは、もう花が終った後だった。つぎに行ったのは雪の季節で花には早すぎ、そこでは咲いた姿をまだ見ることができないでいる。

ふくじゅそうには毒があり、食べられないが、心臓病や利尿の薬として用いられるという。

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