きんかん・くちなし
 
 
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どちらもお正月に縁がある。

きんかん(金柑)だが、わが家の庭にも30数年たつ1本がある。いまでは3mを越すような大木になり、毎年12月から1月にかけて大鍋1つには余るほどの実をつける。

初めて、このようなきんかんの大木を見たのは、奥武蔵の山上集落ユガテの南斜面だった。こんもりと枝をひろげた数本の木が午後の陽光に輝く金の鈴のような実をたわわにつけていた。そして、それが、この2、3軒の山村をいかにも幸せそうに見せていた。

きんかんは生で食べることもできるが、多くは甘煮やジャムなどにする。

わたしの甘煮のやり方は、次のようだ。

水でよく洗って1粒に5箇所ほどの切れ目を入れ、まず1度手早く茹でてから湯をきって、砂糖を加える。そのあとはとろ火でゆっくり煮て、最後にしょうゆをひとたらし隠し味にして仕上げる。おせちの重箱の隅に彩りとして入れるのもよいだろう。

きんかんは、のどの痛みやせきに効くと知っていたが、はしかにも特効があるらしいとは泉久恵さんから聞いた。

 

くちなし(梔子)というと、6、7月ごろに咲く白い花を思い浮かべる方が多いかもしれないが、今の時季、庭先などで目にするのは濃いオレンジ色に熟した実のほうだ。この実が完熟しても開裂しないので、くちなしと称ぶようになったという説がある。

襲(かさね)の色目にも赤味を含んだ濃い黄色の梔子があるように、古くから染料として、また、消炎、利尿の効能のある漢方薬としても用いられてきた。

わたしは、この実の煎じ汁を正月料理のきんとんの色づけに使うが、そうすると見た目にも美しい黄金色に仕上がる。なお、もち米をこの色水に浸し、黒豆を加えた強飯を不祝儀の際に炊く地域があるとも聞いている。

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