くわ、あざみ、はんごんそう
 
 

摘草というと、春の芽が出たばかりの若草を想うのが当り前かもしれないが、夏や秋にも摘んで味わうことのできるものもある。

ここにあげたものは、そのほんの一部だ。

何年も前の昔のはなしだが、梅雨が明けきらぬ頃に雲取山へ登って、雲取山荘に泊った。ほかのお客もあまりなく、小屋番(当時)の新井信太郎さんは「今日は少人数だから、天ぷらをおごるよ、何がいいかい」と、からのざるを持って戸口に立っていた。よく聞いてみると、これから材料の葉っぱを取りにいくのだという。「天ぷらにすれば、たいがいのものは食べられるよ」と。

その晩、揚げて出されたのは、にわとこ、かえで、くわ、あざみ、はんごんそうのほか、くるりと筒に巻いたささ(笹)の新芽まであった。これは、外のころもだけを、ささの移り香を愉しんで食するものなのだそうだ。

先日、7月の終りに霧ヶ峰のやまびこ谷へ出かけた。ニッコウキスゲやフウロソウ、ヒヨドリバナ、ミズチドリ、イブキジャコウソウなどの花を楽しみつつ稜線を、殿上山、南ノ耳、北ノ耳と歩いたあと、麓では、はんごんそう、あざみ、うどなどの葉を少し摘んできて、翌日の夕食に、その天ぷらを味わうことができた。 


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