13. 小金沢連嶺      1996(平成8)年4月23日

前夜は大菩薩峠の介山荘泊。寝る前に明日の天気はと外を見ると、時ならぬ小雪が舞っていた。だが、朝になるとすっかりやんで、これぞまさに小金沢連嶺縦走日和、奥多摩山岳会の旧友中野英次さんと「いい日になったね」と喜んだ。

この尾根を私が最初に歩いたのは1953年11月、まだ、沼の窪の大菩薩館を定宿にしている頃だった。狼平から小金沢山を越して湯ノ沢峠へ抜けるというと、館の志村恵男さんが「ここのところ、あの尾根は誰も歩いていはいないからな」と心配してくれた。その志村さんも遠の昔に亡くなり、今は大菩薩館そのものも影も形もなくなっている。ここに載せる写真の小金沢連嶺にしろ22年前のことになるので、現在のそれはいざ知らずだが、この時は、まだまだ、昔の善さを残しているところもあると嬉しく思いながらたどった。しかし、湯ノ沢峠にたつ無線施設には幻滅だったし、焼山沢をくだって日川林道にでてみれば、今浦島もいいところ。昔、私たちがインディアンといっていた切り通しなど跡形なく、電話を借りて駅からタクシーを呼ぼうと考えていた天目温泉にしろ、その情緒皆無の建物には気色が悪い。結局、初鹿野ならぬ、これも忌々しい駅名に変った甲斐大和まで歩いたら、嫌になるほど長かった。   (2018.8)
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