後ガキ山(甲府北部

12月なかばに昇仙峡から御岳峠まで歩いたとき、すぐ脇を通りながら立ち寄らなかった山があった。それで、最終の木曜山行で登ってみようと麓まで行ったが雨で結局登らずじまいだった。

そこで、そのとき考えていたルートを新年最初の山歩きにすることにした。毎年、新年最初には神社のある山を選んでいるので、すぐ近くに金桜神社があるのも好都合である。

10年前、やはりこの山で新年会をしたことがあった(こちら)。広葉樹の林の雰囲気が良かったからだったが、山のてっぺんまで登ったことはなかった。その林がすべて伐採されてしまったので、こんどは展望を楽しもうというわけである。

新年山行は、誰も来そうもない山の一角で車座になって、昼間から飲み食いするのが恒例だったが、飲んで歩く歳でもなくなって、宴の部は山から帰ってからのお楽しみにした。

年末から続く好天が相変わらずで、展望目当てだから願ってもない。5日ならもう人出もないかと思っていた金桜神社は、駐車場所を探すほどのにぎわいで、さすがは山梨県の初詣ランキングに入る神社ではある。そそくさと参拝を済ませ、山に入った。

この方法がいいんじゃないかと思ったルートは案の定大変よろしく、まったく問題なく頂上に達した。四囲の眺めは想像していたとおりで、しかし樹木の成長は早いから、この大展望もあと数年かと思われる。

さて、この、等高線から読むと標高1000mをわずかに切る無名の山に名前を付けなければならぬ。この山から北東に延びた稜線は金桜神社の直前で崖になって落ちている。原全教はこの断崖の山を「ガキ山」としており、甲斐国誌によるというのでそちらを見ると「我貴山」となっている。おそらくこれも当て字で、「垣→ガキ」か「崖→ガケ→ガキ」といったところではないだろうか。

それらの資料から「後ガキ山」と命名することにした。この近辺では、「猪狩山」に続き、2山目の命名である。ま、一般化することはあるまい。

茅ヶ岳の尾根歩き・正楽寺(若神子)

ちょっとしたアクシデントで戦列を離れていたおとみ山と、そして絵描きのすがぬまさん、驚異(脅威)のローリング80sおふたりとの新年山行にはどこがいいかと頭をしぼった。

相変わらずの好天なのだから、展望がいいに越したことはないし、絵を描く時間も欲しいからのんびりゆっくりと歩けるところがよい。それでいて人けのないところ、すがぬまさんは東京から日帰り、といろいろ条件を考えて、茅ヶ岳の尾根歩きをすることにした。日本一明るい山は冬の散歩にはぴったりである。

茅ヶ岳が「ニセ八ツ」などと言われるのは、頂稜の山容もさることながら甲府盆地方面から見た山裾の相似にもあって、ふたつの火山の長い裾が重なって見えるのは、かなり珍しい光景ではないかと思われる。

八ヶ岳の裾と重なっている茅ヶ岳の稜線は、北杜市と韮崎市の市境尾根である。中央高速の韮崎インター北で掘割状に断ち切られているのがこの尾根で、茅ヶ岳の稜線の中でもっとも長い。茅ヶ岳の尾根を片っ端から歩いてみようと企てて、まず歩いてみたのがこの尾根で、もう10年以上前のことになる。

ところどころが伐採地で展望もいいので、私がまだ知らない方面から登って自分の興味も満足させつつ、この尾根をつまみ食い的に歩いてみることにした。歩きだしてすぐ、里道での南アルプスの絶景に、はやくもスケッチ休憩をすることになった。

古くから利用されてきた茅ヶ岳の裾野には無数といってもいいほどの作業道があって、使われたあとには廃道となっている。むろん地形図にそんなものはまったく記載されていない。現地にてそれらを適当に拾いながら稜線に出た。

この日の目標にした尾根上の突起にある三角点名は「宮の入」である。4等点だから比較的新しい。すぐそばの枯れた赤松の大木の根本には石祠が2基あって、それからの命名だろうか。あたりは、かつては大展望があった広い伐採地だったが、今では若い楢林になっていて、しかし、枝越しに甲斐駒や鳳凰が並んでいるのも乙なものである。そこでスケッチタイムを兼ねた昼休みで1時間以上も過ごしたのちの帰りがけには、こんどはすっきりと八ヶ岳の見える場所もあって、すがぬまさんはまたスケッチブックを取り出すことになった。

隣の尾根にはまだ伐って間もないように見える伐採地があった。そこもさぞかし展望がよいだろう。来週の木曜山行で訪れる場所が決まった。
茅ヶ岳の尾根歩き・三之蔵から饅頭峠へ(若神子・茅ヶ岳)

先週、茅ヶ岳の北杜韮崎の市界尾根をつまみ食いして歩いたとき、ひとつ東の尾根に伐採地が見えた。それで来週はあそこに行ってみようと決めたのだった。

山岳展望目当てなのだから曇りでは行く意味がないが、幸いにも期待どおりの好天になった。今回は珍しくまったく初めての人が参加することになった。前日に電話があって、前々からこの掲示板を読んで我々の山行が気になっていたとのこと。ならば、一般的な山歩きではないことをご存じだろうから問題あるまい。新人が参加なんていつ以来だろうか。東京から日帰りだというので、茅ヶ岳の尾根歩きなら合流するにも好都合だった。

さて、伐採地のある尾根は、茅ヶ岳頂上から南に落ちる、防火線のある南稜(すなわちこれが市界尾根だが、市界は饅頭峠で西に屈曲する)が饅頭峠からさらに南下する、名付けるなら饅頭峠南稜とでもいうべき尾根である。かなり前に上半分は歩いたことがあるが、これを末端から歩いてみることにした。すなわち三之蔵を出発点とする。

林道、作業道、踏跡がとにかく交錯する茅ヶ岳の裾野の例にもれず、とにかくそこら中に道がある。歩きやすいそれらには誘惑されるが、こんな場合はとにかく尾根筋一択である。しかし尾根筋にはかつての台風で倒れた大木がおびただしく、ことに前半では苦労させられた。

いかにも茅ヶ岳の尾根らしい、穏やかで美しい林になってくると、目的地の伐採地に出た。ほんとうはここで昼休みとしたかったのだが、前半に時間を食って昼休みは手前で済ませていた。少々遅い到着で、南アルプスは逆光気味になっていた。それを差し引いてもすばらしい展望である。馬蹄状に伐採されているので、場所を変えれば違う展望も楽しめる。遠く槍穂高も見えるし、富士山方面がすっきり眺められる場所もあった。

ここのところ伐採地めぐりのような山行ばかりになってしまったが、今だけの景色を眺めるのも悪くはない。ここには眺めがあるうちにもう一度訪れたいと思った。
茅ヶ岳の尾根歩き・鳥獣慰霊碑上稜線(若神子)

強烈な寒波で世間は大騒ぎだが、もともと寒冷地に住んでいるので別に何とも思っていなかったのが、十数年ぶりの低温で、水道凍結防止システムの老化が露呈してしまった。

そんなこんなでわずらわしい作業が多く、今週は参加者もいなさそうだし、山行は中止にするつもりでいたら、ぎりぎりになってIさんが手を挙げてくれた。帯那山への計画だったが、遠いし、この低温では太良峠の車道が日蔭なのもいやらしい。とはいえ好天は約束されているのだから、どこかに行かないのももったいない。

そこで、困ったときの茅ヶ岳というわけで、3週連続の茅ヶ岳山麓伐採地めぐりにしようと、どこか短い行程ですむ手ごろなところはないかと航空写真を眺めると、ハイハイありました。南向きの山麓なら風さえなければさほど寒くもなかろう。

日当たりのよい茅ヶ岳南麓では、わずかながら降った雪もすっかり消えていた。心配された風もなく、Iさんとバカ話をしながら林道を伐採地のある尾根の取り付きまでのんびり歩いて行った。

伐採地に出るまでは薮を分けるような部分もあったものの、それもわずかな間だった。現地にあった植林標によると3年ばかり前に伐採された斜面にはすでに萱がはびこっていた。それでも予想どおりの展望が得られ、陽だまりに陣取って、かなり早い昼休みとした。我々は日ごろ見慣れていて不感症になっているけれども、これは相当な展望ではある。

終始人影を見ることもなく、早い時間には車に戻った。1月の木曜山行ではついにひとりとして他のハイカーとは遭遇しなかったことになる。

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