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         足和田山 2014.1.31



俗に「富士三足」といって、愛鷹山、足柄山とともに、足和田山もそのひとつとである。足だというのだから、富士山から近しい山だということであろう。それだけに富士山の展望こそがこの山の身上ということになろうが、あいにく五湖台といわれる最高点からの眺めは樹林が育ってはかばかしくなくなっていた。展望を楽しみに人が大勢やってくるような山では頂上の木々は定期的に伐るべきである。

富士山など見飽きている私からすると五湖台から三湖台にかけてのなだらかな稜線の樹林の下を歩くほうに魅力を感じる。だからこそ新緑の頃に一度歩いてみたいと木曜山行でも計画もした。しかしまだ果たしていないのは、たまたま晴天ではなかったから変更してしまったのである。私以外の人にとってはやはり富士山が見えてこその山だろうと思うからである。

この山の北麓の西湖畔にツブラという浜があって、辻まことが一時期友人たちとそこに小屋を持って暮らしていた。有名な『山からの絵本』(創文社)にはその様子が描かれている。

足和田山に隠れて富士山などまったく見えないな場所である。それに代わって、正面には西湖を隔てて鬼ヶ岳から十二ヶ岳の、御坂の山としては険しい山並みが眺められる。要するに富士山がなければこのあたりの山々は皆ひとかどの存在感がある。

富士山の麓でありながら、富士山の見えないところに小屋を構えたのにも辻まことの反骨があるように感じるのだが、ま、これは私の勝手な想像かもしれない。だが『山からの絵本』に収められた絵はおろか文章にもまったくといっていいほど富士山が登場しなかったことが、この本がいつまでも古びない理由のひとつだと思われるのである。
                               
                                (2020.5) 

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