丸山(八ヶ岳東部・谷戸

数日前から好天が確実だった木曜日、今年としてはごくめずらしい。それならそれで、このチャンスを生かそうと、どこへ行ったものかと心は千々に乱れる。

遠くに行かないとどこかに行った気がしないのが現代人の病のひとつだが、我々のように山々の良さゆえに場所を選んで住んでいる者すらそうなるのだから、いかに日常というものが倦怠をもたらすのかがわかる。要するに旅は倦怠からのささやかな脱出なのである。

好天が約束されているなら展望優先で山を選ぶしかない。手近で手頃となれば飯盛山となって、行けば、これだけの大展望の山は滅多にないのだからそれなりに満足するだろうが、あらゆる方法で数えきれないほど登ったので、さすがに新味に欠ける。秋の好日ともなれば人出が多そうなのも閉口だ。

人気の山のすぐ近くに静かな山があるのがセオリーで、飯盛山なら丸山がそれである。そこで、これまでに歩いていないルートをわずかに入れて登ることにした。

丸山の良さは、むろん展望にあって、東西に長い頂上の西側では八ヶ岳の、東では金峰と瑞牆の展望が楽しめる。昨日は、東側の眺めを楽しみながらの昼休みだった。一片の雲もない無風快晴の木曜日は今年初めてかもしれない。

縦走路は、もっとも草深い時季だったとはいえ、以前より踏跡は薄くなっているように感じた。笹の下には倒木が隠れていて、足探りに歩く部分が多かった。

八子ヶ峰縦走(蓼科山・霧ヶ峰)

先般、悪天で流れた八子ヶ峰の縦走を再度計画した。もう何度となく歩いた八子ヶ峰も、車2台が必要な、スズラン峠から白樺湖への縦走は久しぶりだった。

集まったのは、奇しくも同じ年生まれで、しかも苗字がNで始まる3人、木曜山行では相対的若者たちである。

見えるものはすべて見えるという絶好の天気、朝方の青空は歩くうちには徐々に失われたが、山山は逆にますます近く、くっきりしてきた。北アルプスの北部はすっかり白い。

八子ヶ峰ノ原でちょうど昼休みとなって、風が少し冷たかったものの、大観を望みながら贅沢な時間を過ごした。

なにしろ四囲の山々が歩くうちには次々に俺が俺がと登場するものだから、画家のNさんはそのたびに画帳を取り出すしまつだった。

落葉松の黄葉は今が盛りで、白樺やダケカンバは美しい骨だけになっていた。
藤田峠から大畠山(市川大門)

つい先般、市川大門のWさんに会ったとき、大畠山の甲府盆地側が伐り開かれて展望の山になったと聞いた。

大畠山には2004年以来登ってなくて、蛾ヶ岳には何度も登ったが、電波塔と三角点があるだけの殺風景な頂上にわざわざ立ち寄ることもなかったわけだ。

甲府盆地からも電波塔が見えているのだから、木を伐れば大展望の山になることはわかりきっている。よし、あのあたりは樹林がいいから、秋の盛りにでも行ってみようと考えて、それがこの木曜山行の計画になった。

四尾連湖の有料駐車場に停めて、大畠山に登りつつ湖岸稜線を一周しようかと考えたが、それでは工夫に欠けると、今の地形図にも唐突に記入されている藤田峠(とうだとうげ~なんでこの位置に記入されているのかわかりにくい)を探りつつ、地形図の破線をたどってみることにした。

昨今珍しい総勢7人の大部隊になった。ずっと好天続きだったのがさらに続いて、申し分のない天気である。

藤田峠の意味はなるほどとすぐにわかった。現地に行かないとわからないことは多いものである。幸いにも、道標さえあれば明日にでも一般登山道になりそうな径が続いており、このあたりの地質のもろさから、もし、この径が残っていなければ、たどるには苦労する稜線だと思った。藤田集落から市川大門へ下るには最短距離だから、かつては多くの人の行き来があったのだろうと想像された。折しも黄葉や紅葉が盛りで、実に美しい樹林歩きだった。

四尾連峠で大通りに出たら大畠山へは稜線の南側に続く立派な道を登っていくが、どうせなら稜線伝いが楽しそうだと適当なところで上がると、やはりこちらのほうの雰囲気がずっとよかった。

そしておまちかねの頂上、ほほう、これはここに昼飯を食いに来るだけでも価値があると思った。ちょっと位置をずらせば北岳から大菩薩までの山々が見渡せ、甲府盆地を睥睨する、甲府盆地南側の山々の中で屈指の展望の頂上となっていた。

四尾連湖に下ると大型バスまで停まっていて、蛾ヶ岳はさぞにぎわったことだろう。我々は大畠山頂上で3人を見かけたのみ。湖畔を半周し、子安神社へと登った。よくぞこんな山奥に造ったものだという神楽殿は、しかし半ば朽ちかけている。この再建はむずかしいことだろう。

四尾連集落へと続く参拝路の石段はほぼ土に埋もれ、立派な鳥居が倒壊して横たわっていた。しかし歩きやすい傾斜の径は残っていて、集落最上部の民家の脇に出た。

平林から城山へ(鰍沢・小笠原)

山の下調べに地形図を見るのはもちろんだが、最近ではグーグルマップを同時に調べることにしている。

車で出かける身にとって、とんでもない山奥まで入っているストリートビューは駐車場所の確認に便利だし、何より、航空写真が新しいので、地形図ではとても更新が間に合わない現地の様子を知ることができる。そしてもうひとつ、意外に古社寺や城址の情報が入っているのである。

櫛形山前衛の城山(中野城址)は、地形図に名前が記載されているし、麓から見るとなかなか立派な山容だが、大きな櫛形山に重なるせいでほとんど注目されることのない山である。伊奈ヶ湖方面から遊歩道が整備されて簡単に登れることを知って行ってみたのはもう10年以上前のことで、杉檜の植林地に通じる登山道は暗く、しかも30分足らずで登れてしまうので、その後、わざわざ行くこともなかった。

今週の木曜山行にどこぞ適当な山はないかいなと、標高1000mくらいの山を物色していて、この城山を思い出した。しかし、なんぼなんでもあの遊歩道の往復ではなあと、グーグルマップも見てみると、南麓平林に、「平林 天神社」と「雨鳴城」の文字がある。城址はまだしも、地形図に神社記号がないのは不思議だが(明治の地図にはある)、ほほう、城山にこれらを経由して登ればいいじゃないの、と方針が決定した。

これも杉檜の植林地を登るばかりだったが、登山口平林の富士の風景といい、歴史的な興味といい、何より、きつい傾斜がなく、石ゴロもない柔らかい地面の歩きやすさといい、これは中高年向きの白眉の登路だと思った。稜線の甲府盆地側はおそろしいほど切れ落ちているところが多い、天然の要害である。

城山頂上にある展望台は木々が伸びて、少々展望を隠していたが、それでも富士はすっきりと眺められた。この方角からの富士は山肌が険しく、厳しい姿である。どなたかが写真を載せてくれるでしょう。甲府盆地を見下ろしての昼休み、気宇壮大になったことは言うまでもない。

帰ってから調べてみると、南アルプス市のサイトにきちんと説明があった。 知らぬことは絶望的に多い。

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