清泉寮歩道(八ヶ岳東部

「灯台もと暗し」とはよく言ったもの。交通が発達したせいで、現代人は遠くに行かなければ旅をした気にならないのである。したがって、近所のことはよく知らないのに、遠くのことについてはよく知っているという人が現れる。しかも、そんな人のほうが偉く見られがちなのだからいささか変ではある。

ここのところ清泉寮の歩道を歩く機会が何度かあって、別にどこへ行かずとも、ここを歩いていればハイキングとしては満足できるのではと思った。風景や樹林や渓谷美が楽しめる、第一級のコースだと思う。

今週の木曜山行は、本業があって早く帰らねばならないし、午後からの天気も怪しいので、清泉寮歩道の、まだ知らない部分を歩いてみることにした。気軽に車が2台用意できるのも近所ならではである。吐龍の滝の駐車場に一台置いて、赤い橋から下ってみることにした。

赤い橋付近の新緑は、今まさにもっとも美しいころである。今年は少々早い、そして花付きがとてもいいズミがいまや満開であった。

清泉寮の施設近くにさしかかるとき以外は静かなもので、歩いているときにすれ違った人はほんの数人であった。ピクニックバス運行中なら、いろいろの楽しみ方ができそうである。山頂にはこだわらない逍遥派にはぜったいのおすすめだと思った。

八子ヶ峰(蓼科・蓼科山)

この時季の八子ヶ峰は、木曜山行にかかわらずいろいろな人と出かけ、ほぼ毎年恒例のようになっている。なんでまたそんなにと問われたら、まあ一度行ってごらんなさいと言うしかない。四囲の大展望はその位置からいわずもがなだが、何しろ緑の多彩さには驚くばかりである。

山旅サイトでもおなじみの画家の中村さんが(参考リンク)、この時季の八子ヶ峰がまだで、ぜひ行きたいというので今年も計画した。他の山なら、なにか変わった方法でと考えることも多いが、八子ヶ峰の場合はほぼコースは決まっていて、それでまったく不満もない。

ごく久しぶりとなるお二方も加わって、これも久しぶりににぎやかな木曜山行となった。天気は上々、まぶしいくらいの緑とうるさいくらいの蝉時雨の中を出発した。

今年はズミの花がどこでもすばらしいので、その満開をここでも期待したのだったが、稜線ではまだ5分咲きといったところ、まあそれはそれでよい、つぼみのピンクも愛らしい。レンゲツツジもまだつぼみで、しかし今年は花が多いようだ。来週あたりに行った人は両方を楽しめるのではないかと思う。

とにかくゆっくりのんびり、中村さんが描きたい場所があるたびに大休止した。それでもまだ休み足りない、つまりは去りがたいこの季節の八子ヶ峰であった。
板橋川左岸尾根(柳沢峠)

この時季、めったに甲府方面に出かけることはないが、朝方石和に用があるので、そちら方面で適当な場所はないかと考えて板橋川左岸尾根を思い出した。あそこなら緑がすばらしいだろうし、下界が夏日の気温になるかもしれないという予報でも暑くはなかろう。

このあたりの東京都水源林はルートの取り方によって長短はどうにでもなるが、最近は板橋川を遡って、左岸尾根を下るという簡単コースで歩くことが多い。これで樹林から展望まで楽しめるのがミソで、短いながらも満足感は大きい。

この20年、通るたびに工事で変わっていた柳沢峠への国道は、最後に残った、峠手前の工事も終わっていて、ついにすべて完成していた。これにて、もう昔日の道を通ることは一切ない。

かたわらにうるさ過ぎない瀬音を聞きながら、緑に覆われた中を登る気分は何とも言えない。大都会の維持に世にも美しい森が必要などとは、当たり前のような皮肉のような、いつもこの森を歩くときに考えさせられる。

森を抜けてたどり着いた板橋峠に大ソーラー発電所が現れるのは興ざめもいいところで、数年前、初めて見て度肝を抜かれたものだが、面積はさらに広がっていて、そのうえ、まだ敷設前のパネルが積み上げてあった。すでに設置するだろう山肌の木々は伐採されていて、次に来るときにはまた風景が変わっているに違いない。

左岸尾根に来るのはこの木に会いに来るのだといってもいい、あのブナの木は健在で、その下でゆっくり昼を過ごした。標高差300m足らず、中高年には最高のハイキングコースである。

美し森~吐龍の滝(清泉寮歩道)(八ヶ岳東部)

5月の八幡山に引き続き、♫夏も近づく♫とて、八十八のおふたりがそろった。脇を下々が固め、繰り出したのは清里高原であった。山旅号が車検で使えず、各々のマイカーを活用して行ける近所で、安全に歩けるところを考えたというわけだった。

美し森の駐車場を出発点としたのは、雨上がりの大展望を期待してのことだったが、残念ながら霧が濃い。そこで上に登るのはやめ、ぶらぶらと林道を歩くことにした。ところどころに色の濃いヤマツツジが咲き残っていた。

赤岳旧登山道を下るつもりでいたら、分岐を少し行き過ぎてしまう。まったく道標などないうえに、入口が草に埋もれていたのである。かつては殷賑をきわめただろう道もこの有様である。

吐龍の滝までひたすらゆるく下っていく。途中のファームショップのベンチを借りて昼休みできるのも木曜山行らしくなくてたまにはよろしい。展望にこそ恵まれなかったが、緑のゲップが出るほど森林浴をした。

歩き終えて、ちっとも疲れていないように見えたのは八十八のおふたりだったのだから「末」おそろしい。

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