オッ立(笹子

かつて散々歩いた大菩薩の南端付近も、オッ立に登った記憶がない。そこで去年の冬場に計画したのだったが私の骨折により中止になってしまった。

樹林のいい山は冬枯れも悪くはないが、春秋こそが美しいに決まっている。そこで秋の盛りであろう時期に再び計画してみたのだった。

去年は景徳院から登るつもりでいたが、大鹿峠を隔てて逆側、もう10年近くご無沙汰している大鹿川からのコースを設定した。これなら道証地蔵を基点にきれいな周回コースとなる。

全般にくすんだ色の今年の紅葉黄葉だが、笹子トンネルを抜けて見上げるお坊山の山頂付近は錦秋といっていい色をしていた。

沢身を離れて急登するとまるで新緑のような色が黄色味を増してきた。滝子山への径を分けるとプロムナードのようになって主稜線に導かれる。

主稜線からオッ立まではわずかな登りだが径らしい径はない。しかしヤブもなく地面は柔らかく、なんら苦労もなく、すばらしいブナやミズナラの林をうっとりと歩ける。

たどり着いた頂上には場違いに立派な山名標がそれも二基あって、これは県東部の山のどこでも見られるものだが、道標もない山にこんなものを立てるのはナンセンスである。

余計なものがあるのにガマンすれば、広さといい樹林の具合といい、これはすばらしい山頂といってよかろう。予定通り正午に着いて、毎度の山頂飯を食いながら1時間近くを過ごした。

大鹿峠への下りも、ひたすら樹林を楽しむ山歩きである。秋晴れのもと、秋山の楽しみを充分に楽しんで、最後は道証地蔵で一礼して山行を終えた。

瑞牆山展望歩道(瑞牆山)

この冬、車道通行止のあいだに誰もいないみずがき山自然公園に行ってみようとして行ったとき、天鳥川左岸が大規模に伐採されているのを見、さっそくその場所に行って大展望に感激した。

20年前、全国植樹祭の周辺整備の一環で天鳥川左岸稜線に瑞牆山展望歩道と銘打った歩道ができたのだったが、今では道標も朽ち、踏跡も怪しくなって、しかも展望場所では落葉松が育って眺めを隠し、要するに、展望はおろか歩道としても使命を終えているといってよかった。もともとこんな歩道を利用する人はほとんどいなかった。多少は人影を見るのは魔子付近のみであろうが、今では頂上からの眺めは狭い。

それが大伐採によって、少なくとも瑞牆山の展望に関しては最高の場所が出現したのである。瑞牆山から飯森山を経て金峰五丈岩へと伸び上がっていく稜線の迫力といったらない。

こんどはぜひ瑞牆山の裾が黄金色に染まったときに行かねばなるまいと考えたのが木曜山行の計画になった。東京からの参加者があって少々遅い出発となったが、展望場所で長居をしたかったから、そこでちょうど昼時となるのは好都合だった。

秋には紅葉狩りでにぎわう本谷川よりは、誰もおらず、自由に歩ける広い河原のある天鳥川沿いの林が私は好きで、そこを歩くのも楽しみにしていたが、錦秋というには少々時期が遅かった。しかし地面に落ちた葉がまだまだ色を残しているのが美しい。落葉松の色も輝かしいとは言えないものの、それはそれで今年の色だと思えばよい。

秋の好日、おおいににぎわった瑞牆山であったろう。その瑞牆山を見るために歩いていたのは我々だけであった。
女神湖から白樺湖へ(蓼科山)

朝、名古屋のNさんと合流し、車2台を配置して都合よく歩けるところはないかと考えて女神湖~白樺湖間の歩道を思い出した。長和町で整備した中央分水嶺トレイルは長門牧場から美ヶ原への38キロで、長い木曜山行の歴史のうちにはそのほとんどを歩いていたが、前述の区間は残していたのである。

というのも、地図から想像するだに、このトレイル間ではもっとも地味な部分なので、つい後回しになっていたのだった。しかし、もう中信高原の展望は嫌ほど味わっている。美しいことが予想される林を坦々と歩くのも悪くない。晩秋ならなおさら味わい深いことであろう。

冬型が強まった朝、甲府盆地方面はすっきりと晴れ渡っているが、北方向には雲が多い。白樺湖に至ると、晩秋というよりは初冬の雰囲気である。霧氷であろうか蓼科山の頭は白くなっている。

風が強かったので林歩きは好都合だった。上空に轟音がするも林内はそれほど風は吹かなかった。葉のほぼ落ち切った落葉松の向こうに常に蓼科山が、頭を白くした、文字通り諏訪富士の異称ももっともな姿を見せている。

初冬の雰囲気も悪くはないが、その林の良さから、今度はぜひにも新緑に歩いてみたくなる径である。しかし、最後の最後、高差120mに及ぶ1504.9m峰の登りはきつかった。中央分水嶺にこだわるからか、一直線の鉄砲登りを強いられたのである。次回はこの山は省略することにしよう。

その急傾斜をものともせずに登り切ったのは、来年は米寿というお二人なのだから恐れ入る。頂上でしてやったりと高笑いをしたわけだが、ちなみにこの頂上にある三角点名は「高和良比」。明治時代の測量手が三角点設置したときにでも高笑いしたのでこんな当て字でもしたのかと思って、点の記を調べて見たら、フリガナは「タカワラビ」だった。明治37年の設置とあるが、その頃にはこの周辺は広大なワラビ畑だったのかもしれない。
白砂山と白山(甲府北部)

かつて羅漢寺山塊をさんざん歩き回って調査したことがあって、それだけに親しい山域だから年に一度くらいは訪ねたくなる。

昇仙峡がもっとも人出の多いのは秋で、むろん紅葉の峡谷が絶景なのはわかるとしても、押すな押すなの観光客に混じって歩くのでは流儀にもとる。しかしどんなににぎわう山でも、わずかにはずれるだけで静かな場所がある。羅漢寺山塊なら荒川沿いのいわゆる昇仙峡と、ロープウエイの通じるパノラマ台をはずせば静かなものである。

東京から参加のHさんが夕方には帰京しなければならないというので、白砂山への短いコースを設定した。すなわち獅子平からの自然観察路を利用するコースである。今の地形図には主稜線の西側を巻いて通じるこの自然観察路が破線として入っているが、少し前の地形図にそれはなく、主稜線により近いところをたどる旧道が記載されていた。もっともその頃からすでに踏跡程度にすぎなかったが。

白砂山へはこれらの道筋を利用することで、ほぼ周回コースがとれるのでマイカー登山には適しているが旧道は一般的とはいえない。だがまったく同じ径の往復でも存分に楽しめる。

何年かぶりに行ったのだが、新たな道標ができていたり、太刀の抜き岩あたりの松が伐採されて展望が良くなっていたリしていた。長潭橋方面からやってきたという人に聞けば、外道ノ原上部の倒木もどうやら片付けられているらしい。私は最新の『山梨県の山』で長潭橋から金桜神社のコースを加えたが、多少はそれでハイカーが増えて整備がされているのかもしれない。

降り積もった落葉を踏んで歩く気分は何とも言えない。白砂山では昼には早かったので、白山まで下って昼休みとした。先客ふたりが早々と下ったあとは誰も来ず、ぜいたくな眺めを存分に楽しんだ。

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