八子ヶ峰(蓼科

4月から6月にかけての木曜山行は、母を訪ねて三千里ならぬ、新緑を求めて3ヶ月である。

6月は中信高原の新緑を見、これにていよいよ夏に突入という気分になる。その中信高原の新緑の中でも八子ヶ峰の新緑は真打というべきで、どうしても毎年出かけたくなる。八子ヶ峰は四季それぞれに魅力があるとはいっても、私の好みでいえばこの時季こそが白眉だと思われる。紅葉と違って当たりはずれがないのもいい。

木曜日が週で最高の天気になった。この時季には珍しく富士も雪化粧して、神戸や名古屋から遠路おいで下さった方には朝の車窓からの何よりのプレゼントになった。行く手の雲間には北アルプスも並んで気分は上々である。

ズミは下のほうでは散り始めだったのが、中腹では満開、その上では半分つぼみとなって、それぞれの良さを楽しめたのである。頂稜では早いレンゲツツジは花を開いていた。

八子ヶ峰の新緑が圧巻なのは西峰東側稜線の南斜面で、カエデだとは思うがいち早く芽吹く木の鮮やかな緑色が、まだ枯葉色のままの笹の斜面に混じるところにある。だがそれには少し遅くて、すでに山腹の他の木々も芽吹いていた。もっともそうなったらなったで、そのグラデーションはすばらしい。

最後にその眺めをしばし休憩して楽しんだのち、後ろ髪引かれる思いで降ったが、下山路の両側のミズナラの新緑がまた良かった。

大城山に登って大鹿村へ(辰野)

この週は20周年祝賀会と大鹿村行が1日間に置いただけで続くので気ぜわしい。しかし梅雨時にもかかわらず、それらすべてがまずまずの好天だったのは幸運だった。

大鹿村へは行きがけの駄賃に辰野の大城山に寄っていくことにした。小淵沢駅で横浜YYグループ他と合流するのが9時半であれば、昼にはてっぺんに着ける山となるとこのくらいがせいぜいである。

大城山は信州のきのこ山に多い侵入防止のビニールひもが見苦しいが、径の傾斜や地面の状態はめったにないくらいの歩きよさである。頂上まで車で行ける山だからわざわざ麓から歩く人はあまりいないのだろう。古くからの径らしくうまくつけられているうえに地面がやわらかい。ちょうど正午には誰もいない頂上に着いて、天竜川を見下ろしながらの昼休みとなった。

径の良さは下りでこそ発揮される。あっという間に登山口に戻り、観光ドライブしながら大鹿村の宿、延齢草に着いた。小渋川沿いの車道を走るのは去年の秋以来だが、さらに2本のトンネルが完成していて、大鹿村がぐっと近くなったように感じた。

宿は貸切だから、夜は毎度毎度のごちそうをいただきながら談笑は尽きなかった。

鳥倉山(信濃大河原)

明けて空を見たらまずまずの天気。宿の窓からは大沢岳がギリギリ見えるのだが、前日はまったく見えなかったのが朝には見えるようになっていた。これなら南アルプスの展望が楽しめるだろうと、出かけることにしたのは鳥倉山だった。もうこの季節では2000mを越えたあたりの標高が暑がりには好ましい。

もっとも、鳥倉山じたいには展望はほとんどなく、登山口への車窓や、途中にある夕立神公園からの展望がすばらしいのである。車でアプローチできなければおいそれと登れる山ではないが、まったく驚くべきところにまで車道が通じているのである。そして予想どおり、赤石岳や悪沢岳など南アルプスの巨峰が並んだ眺めは壮観だった。遥か下に見える小渋川の谷のなんと深いことだろうか。

鳥倉山は、9年前、延齢草に木曜山行で泊ったときに南側から往復したことがあって
頂上を越えて、明るい草地で昼休みをしたのちに南へと下ったが、季節的に前回ほどヤブがひどいわけではなかったものの、やはり径らしきものはほとんどなく、マーキングも見当たらなかった。そうなると方向を定めて下るしかなく、そして行きがけに見た新しい道標のところにうまく出たのだが、標識だけつけて径は整備したわけではなかったのだろうか。不思議な気がした。この状態では、林道終点から往復するのが無難な鳥倉山の登り方だろうと思う。

9人が乗った古い山旅号には1000mを越える下りは過酷だった。ブレーキングには気を使ったつもりだが、なにやらゴムが焼けるような臭いがして、これはやばいかと思ったころ、やっと大河原の集落に着いた。

八方台の苔の森を歩く(蓼科)

6月の大鹿村山行以来、ほぼひと月山歩きをしておらず、これだけ間があくのは夏休み以外では初めてのことである。今週の木曜日も午後から雨が降るとの予報に、さてどうしたものかと思案して、予定していた冷山は径がないので雨が降ったら厄介だ、そこで例え降ったとしても傘をさしてのんびり歩ける径がいいと選んだのは八方台の尾根歩きだった。これなら曇りや小雨でもそこそこ楽しめる、というよりは、むしろ苔の径は風情を増す。

普通であればこの予報で参加しようという人はいないのだが、同じくひと月も歩いていなくて足が腐りそうになっているおとみ山と山歩大介さんが午前中だけでも歩ければ御の字だと参加した。

北八ツは歩きにくい径ばかりだが、この八方台の尾根だけは、上部の渋の湯分岐以西の歩きやすさは特筆すべきで、しかしそれを書いたガイドブックは皆無なため、黒百合平から唐沢鉱泉に下る人は、わずかながらでも近そうな径を選んで、歩きにくさに要らぬ苦労をしているのである。

予報どおり、正午になるころには雨がぽつりぽつりと顔に当たった。うまい具合に、すでに黒百合平への分岐に着いており、あとは歩きよい径を下るだけだった。この尾根の歩きやすさはおそらく人為によるもので、いつの頃のことか岩をどけたりして径の整備がされたのではないかと思う。いまどきの苔女子を連れて行けば身悶えして喜ぶであろう苔の原をのんびりと味わいながら下れるのである。

いくら歩きやすくとも傘をさして八方台まで行くのは面倒になって、直接唐沢鉱泉に下った。それも怪我の功名というべきで、山靴のまま鉱泉の玄関に入って、山から下って間髪を入れず湯にドボンと浸かることができたのであった。

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