守屋山(辰野

守屋神社の奥宮があるのは守屋山東峰だから、もっとも歴史のある登山道はその参道のはずだが、それがもっとも登られていないのはマイカーでは不便だからであろう。駐車場は少ないし、守屋神社の裏側まで歩いて初めて道標が現れるというのでは取り付きにくい。

登山者がもっとも多い(というよりはほとんどがそこからの往復であろう)杖突峠側からの登山口にはかつて意味不明のアジア公園なるものがあって、しょっぱなから登山気分は台無しだったし(今では大ソーラー発電所ができていて、さらに増設中だからますます雰囲気は悪化中)、どうせ登るなら他の道でと守屋神社から初めて登ってみたのは8年前の木曜山行でのことで、守屋山に登るならこの道に限ると思った。途中にある石鳥居をはじめ、いくつかの石碑が歴史を感じさせるし、人気の守屋山でも、少なくとも頂上に着くまでは静かな山歩きが楽しめる。

ことに冬は好都合、というのも守屋神社から登れば南斜面だから雪は少ないし、下山を杖突峠口にしておけば、北斜面だから雪があるうえに、多くの人に踏み固められているからアイゼンを履いてスタスタと下れて無雪期よりずっと楽だからである。

てなわけで、木曜山行では3年ぶりの守屋山、前回とまったく同じルートではあったが、東峰まで登ると、西峰への稜線に名物の霧氷がまだ残っていたし、守屋山が初めての人もあったので、最近では省略することが多かった西峰にも足を延ばすことにした。

省略していたのは、わざわざ西峰に行かずとも展望は東峰のほうがいいと思っていたからだったが、やはりたまには行ってみなければわからないもの、西峰の頂上はいつのまにやら広く刈りはらわれていて、狭い東峰よりはずっと好適な休み場になっていた。

北アルプスこそ雲の中だったが、それ以外の山々はすべて見える好日だった。薄い日差しを浴びて南向きの斜面で中央アルプスを眺めながらさほど寒さを感じないまま昼休みをするうちにはぐっと冷気が忍び寄ってきた。

これはたまらんと帰り道についた。たった1時間足らずの間に東峰への稜線の霧氷はすっかりなくなっていた。それにしてもこの頂稜は寒く、それが冬には当たり前のように霧氷ができる要因かと思われた。麓に諏訪湖があるのも関係しているのかもしれない。

ところが面白いことに東峰の頂上だけは暖かく、これは前にも感じたことである。ここだけは地熱のせいか気流のせいかうそのように暖かい。ひょっとすると神のご加護かも知れぬ。うまい具合に他の登山者が下ってしまったあとだったので、ゆっくりと休むことができた。

杖突峠口への下りは適度な圧雪とアイゼンのおかげで実に快適であった。

上ノ平山(切石)

市川大門のWさんから花だよりが届いたので、どこに行こうか迷っていた今週の木曜山行はその山に行くことにした。富士川沿いの山に行くことが最近ではあまりないので、ちょうどいいと思ったのである。初めての山だがWさん夫婦が同行してくれるというのだから心強い。

市川三郷や身延町の富士川左岸には、地形図を眺めていればいくらでも小山があるが、あのあたりは竹藪があるので突破するのが厄介なことがある。Wさんが教えてくれた上ノ平山(ウエンテーラヤマと呼ぶらしい)には地元の方々が歩道を整備してくれていて気軽に歩けるという。標高387mとは木曜山行史上もっとも低い山かもしれない。

旧六郷町宮原まで高速道路に乗ってしまえばたかだか30分だが、自分の家からは1000mちかくも下るのだから家々の様子もあたりの植生もまるで雰囲気が違うのが面白い。Wさん夫婦と待ち合わせたのは宮原のスポーツ公園で、すぐ目の前に目指す山が見える。手を伸ばせば届きそうなくらい低い山だが、分け入ればそこそこ登らされ、てっぺんから下を眺めればそれなりにお山の大将になった気分がするのだから不思議である。

登る途中にあるミスミソウの群落は、まだ群落というには早く、花をつけているのもまだつぼみが多かった。あとしばらくでもっと楽しめることだと思う。このあたりの山では杉檜の植林地が多いと思い込んでいたのが、ほとんどそれもなく明るい山だったのは何よりだった。

頂上近辺はかつての畑の跡だという。小広く刈りはらわれており、富士山が少しだけ頭を見せていた。西へと下る途中にも畑の跡と思われる地形が多くあって、下部側に一段下った日当たりのいい畑跡で長く昼休みした。

さんざん休んでもまだ早い時間に下山したので、Wさん夫婦がこんどは車で芦川沿いのセツブンソウの群落へ案内してくれることになった。こちらは今が盛りと言ってもよく、花をあまり知らない私は、ミスミソウに引き続き、セツブンソウの実物も見て勉強させてもらった。

饅頭峠(茅ヶ岳)

好天の日曜日、予定していたのはたいら山だったが、諸事情あって出発が遅くてもいい近場の饅頭峠に行先を変えた。横山夫妻とは今年2度目の山歩き、名古屋のNさんは半年ぶりの参加、それに、横山さんの『登山読本』を若いころに読んでいて、一度お会いしたいと言っていたTさんが加わったのは偶然だったが、楽しい巡り合わせとなった。さらに地元からは毎度おなじみのおとみ山が加わった。

饅頭峠へは、ゴルフ場造成にともなって移動された御岳道を歩く。いまどき珍しい未舗装の車道を歩く部分が長いので、オフロード愛好家が遊びに来ることが多く、日曜日ゆえわずらわされるかもしれないと思っていたが、幸い静かだった。かつて『山と溪谷』誌で、この御岳道を使って茅ヶ岳に登る方法を提案したことがあったが、入口の駐車場には一台の車もなく、どうやら面倒なことをしてまで静かな道を歩きたいという人はほとんどいないようだ。

車にさえわずらわされなければこれだけのんびりと歩ける道もそうはない。よもやま話をしながら歩く。しかし少々の登りで饅頭峠に到着すると、とんでもない光景があった。

「ありゃー」と思わず声が出る。饅頭峠から北に延びる稜線は林の雰囲気が良かったが、その半分がばっさり刈られてソーラーパネルの畑になっていた。深田記念公園のすぐ上の斜面である。

添付写真の右端がその光景である。いまだ工事中のようだったが、こんな野放図にはいつかしっぺ返しがあるような気がしてならない。

中山(長坂上条)

名古屋のNさんと旭山の予定で、それに加わるつもりの人あったのだが、予報が午前中は雨だというので早々と中止にしてしまった。

ところが明ければ雨は降っておらず、しかもみるみる回復しそうな気配、ならば出かけましょうかと選んだのは中山だった。初めての人にとっては天気さえ良ければこんなに楽しめる山はめったにない。

雲の中から新雪の甲斐駒が現れて絶好の中山日和で、Nさんもいたくご満悦の様子だった。

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