増富日向山(瑞牆山

日本一日当たりのよい茅ヶ岳の尾根下りならやはり晴天の日に実施したいと、午後から雪との予報に計画を変更することにしたが、結局都合がつくのはおとみ山だけだった。

それなら下山後におとみ山が好きな増富温泉にドボンとできる山がいいだろうと、これは私の興味で、前々からちょっと行ってみたかった日向の裏山を選んだ。ひょっとしたら正式な名前があるのかもしれないが、ここでは増富日向山と仮称しておこう。

おそろしく遅い10時半の出発だった。それでも昼前には余裕で着くだろうと思ったからだが、結局頂上に着いたときには昼を過ぎていた。たかだか50mくらいの急斜面が地面が凍り付いていて突破できなかったのである。目をこらすとたいていはケモノ道が見つかるものだがなかなか見つからず、やっと見つけたケモノ道は山をぐるっと回り込んでいった。それをたどってトラバースしていったら旧い炭焼き道に出会った。そう思ったのはその道をたどって登る途中に炭焼き釜があったからである。歩きだしてすぐに舞いだした雪が本降りになっていた。

炭焼き道はうまい具合に頂上へ向かって続いていた。頂上一帯にはいくつかのピークが散在していて、地形図からはわからないが、実地では、西端のピークがもっとも高いように見えた。ひとつひとつのピークをすべて踏んだのち炭焼き釜まで下って昼休みとした。寒くはないが雪はますます強くなり、さすがに長くは休んでいはいられなかった。

帰りは炭焼き道をそのまま下ったが、だんだんかぼそくなった。なんとか古い畑跡に出、民家の裏側から車道に出た。

ごく短い行程だが、滅多に人が行かないだろう山に登ってなんとなく満足し、増富温泉に浸かって「健康」登山を仕上げた。


吉田山(茅野市市民の森)(南大塩)

霧ヶ峰からの帰りには長野県道諏訪茅野線を通ることが多い。この道路の南側は前々から地形図を眺めて気になっていた。それは、私が山間のなだらかで広い場所を好むからである。そんな場所はたいてい開発されてしまうものだが、それらしい形跡もない。

その道脇に「市民の森」と書かれた新しい看板が現れたのはわりと最近のことである。こんなときはインターネットは便利なもので、調べてみると案内図まで出ている。http://www.city.chino.lg.jp/www/contents/1000000679000/要するにこの山域は市民の森という名前の公園化していたわけだ。この県道側は裏口で、永明寺山に通じる車道側が表口にあたる。表口は以前からあって、裏口が最近できたことで私の目につき、「市民の森」のことも初めて知ったのだった。

吉田山という山名もこの案内図による。もっとも、よくありがちな絵地図でこれでは私のような地形図マニアは満足できないから歩いて確かめようと1年前に歩いて、その後も何度か再訪、全体像がほぼわかった。

実際に歩いてみると林道および作業道をたどることがほとんどで、しかし一般車は通行止めのようなのでのんきには歩ける。広葉樹が多いので芽吹きのころは美しいと思うが、あいにくまだ経験していない。

木曜「健康」登山としては冬の散歩登山には最適な山で、厳冬2月の計画に入れたのだった。3月一杯までは閉山中だというが、歩いて文句を言われるということもないだろう、ゲートがあって鍵がしてあるというわけでもない。

ラッセルというほどでもない積雪があって、雪山ハイキングの気分は上々だった。途中からはスノーシューで歩いた跡が現れた。傾斜がゆるやかな道ばかりだからもう少し積もればスノーシュー遊びにはいいだろう。

吉田山頂上一帯は広場になっていて、桜が植樹されている。いずれ桜の名所になるのだろうか。富士山が見えるように展望台がしつらえてある。最高点には三角点があって点名は「埴原田」である。

頂上に着くころには日が陰って、陽だまりでのんびりというわけにはいかなかった。帰りも同じ道でも面白くないと、途中からは迷路のような作業道を適当にショートカットしながら下ったが、それが楽にできたのは雪のある季節ならではだった。

比志の塒(谷戸)

樹林の良い津金の山でも、笠無と比志の塒の頂稜の雰囲気の良さは出色で、それがこの山域に多く通う理由である。最後に比志の塒を歩いたのはいつだったかと調べたらすでに4年前で、そんなに間が空いたのかと思う。http://yamatabi.info/2014d.html#2014d3

津金の山はミツバツツジがすばらしいので、その時季を選ぶことが多いが、雪の季節には歩いたことがなかったので、地元の山にご執心のヤマネコさんのリクエストもあって、厳冬2月の計画に入れた。

しばらく行かないうちに、笠無の稜線がまたひとつ禿山になっていた。今のうちに登れば大展望が楽しめるだろう。その尾根を左手に見ながら沢を遡り、ケヤキの群生地から山腹のケモノ道を斜上して稜線に出るのが毎度の方法だが、雪の上に鹿の足跡こそたくさんあるものの、雪の下が凍っていて、尾根に取り付くのは簡単ではなかった。今年初めてアイゼンを履いて突破する。

津金山地の主稜線に出ると、枝を払った切り口がまだ新しかった。色鮮やかなピンクのテープが岩稜を通過する間には目障りなほど点々とある。目立つためにその色を選んでいるのだから設置者としては好意なのだろうが、あらずもがなの目印である。要するに、こういった山域に好んで入る人がこんなテープをあてにして歩くだろうかということだ。

主稜線に出ても人の足跡はひとつもなかった。積雪以来入山者はいなかったようだ。風は強かったが南からで、あたっていてもさほど寒くない。比志の塒の長い頂稜の適当なところで、風を避けるよりは陽光を選んで昼休みとした。

どこかをてっぺんとしなければならないような山でもないが、初めての人もあるので、昼食後、三角点まで往復した。以前はあった趣味の悪い山名板も朽ちてしまったのか見当たらなかったのは幸いだった。こんなところには何もないのが望ましい。長く持つようにと凝った山名板を設置する人があるがもってのほかの愚行である。

地面が凍っているので下りもアイゼンを履いたままだったが、有効だったのは雪がないところだけで、雪のあるところでは腐った雪が団子になってアイゼンなどないほうがいいという、妙なことになってしまった。

八千穂高原スノーシュー(松原湖)

去年の初夏、にゅうに登った帰りがけに立ち寄った「八峰の湯」がちょうど開館10周年とかで、無料入浴券をもらった。その有効期限が今年度一杯だったのだが、わりと出かける方角だからそれまでには使うだろうと思っていたのがあとひと月になってしまった。そこで、行先を八千穂高原方面としたのである。ケチ根性で山を選んだので、何か深遠な理由があったわけではありません。

雪遊びとなれば背景には真っ青な空が欲しいところ。しかし朝方は曇り空でどうも望み薄という感じだった。ところが現地に近づくにつれてどんどん空は青くなり、快晴といってもいいくらいになった。八千穂高原へと登っていくと、カラマツ林の霧氷が美しく、おとみ山と二人きりだというのが何とももったいない。

八千穂レイクあたりでスノーシュー遊びをしたとはよく聞くから、あのあたりまで行けば何とか遊べるくらいの雪はあるだろうという算段だったが、果たしてまずまずの積雪だった。しかし、東洋一という白樺林に通じる散歩道をスノーシューでペタペタするだけではやはり皆と同じで面白くない。そこで、八千穂高原よりは八ヶ岳寄りの八柱山の山麓あたりをうろついてみることにしたのだった。いくらスノーシュー遊びでも山登りには目的地がないとつまらないから、八柱山東稜にある1736.1mの三角点(点名・水無)をそれとした。

途中まではスノーシューは不要だったが、標高を上げるといよいよ出番となった。動物の足跡しかない雪に人間の足跡をつけていった。目的地の三角点は雪の下で見つけられなかったが、まずその場所で間違いはないだろう。

下りではスノーシューが威力を発揮する。雪がなければ入らないような急斜面をぐいぐい下っていくと、伐採地に出て、そこからの眺めがまた素晴らしかった。

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