三窪高原縦走(柳沢峠

高速道路から見える大菩薩や奥秩父が白くなっていた。森林に覆われたあのあたりの山が白く見えるのは降ったばかりのときである。前日、平地でも雪が降るかもしれないと予報が出ていたが結局降らず、しかし山では降ったらしい。

塩山で合流したFさんがスノーシューを抱えていたので、何を大げさなと笑ったのだったが、柳沢峠へ近づくと、それをあながち笑えなくなってきた。しかしこの時期に新雪を踏んで歩けるとは思っていなかったので、嬉しい誤算となった。まだひとりも踏んでいない美しい雪に足跡をつけていった。

三窪高原の主稜線から鈴庫山へは、いったん下ってから登るという往復になることと、頂上直下が急なので雪がついていたら面倒なことになるかもしれないということで、結局予定を変更して北へと稜線を縦走することにした。念のため、計画を変更できるように、あらかじめ自転車をデポしてあったのである。鈴庫山は山が緑に覆われたときにでもまた来ればよい。

三窪高原でもっとも人出が多いのはハンゼの頭一帯だが、高原らしい雰囲気はそれよりさらに北側のほうが優れている。その一角の、雪の融けた南向きの草原で昼休みとした。盆地の向こうに南アルプスの連なりが望めるし、陽が射してさえいれば長居をしたいところだが、午後にさしかかったとたんに雲が陽ざしを隠し始めた。

板橋峠への防火線の下りは急だが、北斜面になるここが昨日もっとも雪が深く、足任せに快適に下ることができた。雪がなければこうはいかない。ただし、行く手に見える、かつての別荘分譲地にできたソーラーパネル群は目障りである。

誰ひとりにも出会わない、新雪の三窪高原を楽しんだのち、最後は私のお気に入り、板橋川左岸尾根をぐんぐん下って青梅街道に出た。

高烏谷山(信濃溝口)

数えてみたら6回目だというのに、性懲りもなく計画を立てるとはよほど高烏谷山が気に入っているということだろう。たしかにこの山頂からの展望は、何度眺めてもすばらしい。

しかしそれにしても、毎度同じの高烏谷神社からではさすがに面白くないので、火山峠から登ってみようと計画したのだったが、参加者のほとんどがこの山が初めてだというのでは、まずは由緒正しい神社からの参道を登るにしくはないと考えなおしたのであった。

前日の夜には星空が拡がっていたが、ロッジ山旅を出発するときにはすでに空は白くなっていた。展望が身上の山ではその見え具合だけが心配だが、中央道が伊那谷に入ると、青空こそないが中央アルプスの白い山はわりとくっきりと見えていたので安心する。

神社の駐車場に他の車はなく、今日も貸切を予感させた。そして結局最後まで他の登山者に出会うことはなかった。ほぼ頂上近くまで車で入れる山なので、車道が通行止の冬が我々の登山適期である。

高烏谷神社からの登山道は地殻変動が徐々に起こっているのだろう、登るたびに傾斜が強まっている。しかし急なだけに勝負は早い。一汗かいたところで早くも頂上に着いた。

景色を眺めながらのんびりするには最適な広い頂上である。中央アルプス側にはさえぎる物はないが、他の方向は奥宮の社叢が少々邪魔をする。まあ、しかしこれがあっての高烏谷山なのでもあるから文句は言うまい。

往路を下るつもりだったが、ちょっと色気を出して、地形図に破線の入った、並行する尾根を下ってみることにした。歩きやすそうなキノコ径を適当に拾って下ったら、思ったより東に下ってしまい、駐車場へ尾根を延々と藪漕ぎで巻く羽目になった。

斑山(若神子)

キノコ狩りでもなくて私ほど津金山地に登った人はそうはいないと思われるが、その中では斑山が一番多く登った山かもしれない。ちょっと数えただけで20回以上にはなる。

主要な尾根はほとんど登ってしまったが、今回は、一昨年の春の木曜山行で初めて登って気に入った、北西側からのルートを再訪することにした。

新緑の良さを想像しながら、気分のいい尾根道を歩く。津金の山にはミツバツツジが多いが、年によって花の咲き具合にはかなり差がある。今年はどうだろうか。

夕方から年度末宴会を予定しているので、一気に頂上を越えて縦走し、昼は、最初はここで宴会をと考えていた場所で過ごした。里がすぐそばだというのに、隔絶された感じのする場所である。

ぐんぐんと気温が上がって、南向きの日向にいると暑いくらいの陽気になった。山歩大介さんがちょうど新緑の季節に古希を迎えるというので、どこか近所の山に登ったあと、ここをお祝いの会場にするのもいいかもしれない。そのころには緑陰ができているだろう。

夕方からは、ほぼリフォームの完成したロッジ山旅の食堂で、初めての宴会となった。

大笠山〜武田神社(甲府北部)

冬から桜が咲く時季にかけて甲府盆地の北山を歩くのは、四半世紀も前からの楽しみのひとつである。それだけ長く同じ山域に通っていれば、おおかたの山径は歩いているが、愛宕山周辺のみは数々の施設があることに恐れをなして、去年の暮れに初めて歩いてみるまではまったく知らなかった。

ところが歩いてみれば、このあたりの山に共通の美点、すなわち雑木林が美しいうえに、ことに大笠山には、ちょっとマニア向けの登路があった。そこで、そのときは南側から往復しただけの大笠山を、さらに北へと歩いてみようと冬の計画に入れたが流れてしまい、ならばと花見を兼ね、今年度初めての計画としたのだった。

まず最初に立ち寄った武田神社界隈の桜は、概してまだ7分といったところ。武田通りの桜並木は古木になって樹勢が衰えているように感じられた。まわりが舗装で固められているので植え替えも大変だろう。

大笠山への登山道は立派なものがあるが、我々はわざとあまり登る人のいない径をたどる。山腹にも頂上にもは大岩が累々としているのはおもしろい。立地からなにかモニュメントでもありそうなものだが、頂上とおぼしき場所には山名表示ひとつないのは珍しい。

さて大笠山から武田神社へは初めてだったが、何ら問題のない山径が続いていた。車道を横切ってからは遊歩道となって、これは武田の杜の遊歩道の一部分をなすらしい。

いつごろ整備されたのかは知らないが、木段が自然に還りかけているのを見るとかなり前のことだろう。かなり金をかけて整備したのもかかわらず、やがて放置され歩く人がごく少なくなってしまった歩道を好む私としては、おおいに気に入った。甲府盆地を見下ろす立派な展望東屋で長く昼休みをした。

大笠山の頂上付近で3人に出会っただけで、武田神社に下るまで、ついに誰ひとりすれ違う人はいなかった。もう少し緑が多くなったらなおさら楽しめる径だろうと思う。

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