図書紹介・『植物図鑑』 (有川浩著/角川書店) 

題名が紛らわしいが、長編恋愛小説なのです。初版発行は1年前の平成21年6月30日で、その後版を重ねて結構売れているようです。

発行当時、広告も出たのでしょうが、私はまったく気づきませんでした。今年になってから重版の新聞広告が目に入り、別に小さな紹介記事を読んだりして気にし始めたのです。

さて、読んでみると、私から見ればまさに孫のような、20代後半、青春というには少しトウの立った、しっかり今どきのおネエさんおニイさんが主人公です。

お話は冬の終わりから始まって、春から夏、秋と、彼女と彼の住む街と、それを区切る里山の麓までの、摘草と山菜採り、それを使った料理に沿って進んでいきます。そこがこの物語のユニークなところです。

そして題名の通り本の見返し、総扉にカラー写真、中扉はモノクロの野草・山菜図鑑になっています。巻末には数種の山菜料理のレシピ(写真入り)までついていて周到です。

主人公たちが、それなりに自立して責任感のある人物設定になっていて、気持ちよく読めました。初出はケイタイ小説だそうですが、これでケイタイ小説なるものを少し見直したしだいです。

摘草や山菜がお好きな方にはおすすめの1冊です。