むべ・やまもも 

むべ(郁子・野木瓜)は、アケビ科だが、常緑樹で、丸く広がった複葉の数が5~7枚なのが、ほかのアケビとは異なる。

東京杉並のわが家の辺りでも庭や垣根に植えられているのは見られるが、関東の山では、まだ見たことがない。ただ、浜名湖周辺の山へ出かけたときに初めて野生のむべをみた記憶がある。

図鑑には関東南部以西に自生とあるが、湘南や房総の山にはあるかもしれない。

6、7月は、まだ若い2、3cmほどの緑の実がついているだけだが、わたしは、5月ごろに咲く花が気に入っている。

この花もアケビとは違っていて、白い花弁のように見えるのは萼なのだが、内外各3枚が交互に組み合わさってユリをごく小型にしたような6弁に見える。

雄花と雌花は一緒に咲くが、自家受粉では結実しないようで、2本以上の木がないと実はできない。

秋にはアケビとよく似た紫色の大きな実に熟すが、アケビのように割れることはない。中には、淡いクリーム色の濃いめの葛湯のような甘い果肉がたくさんの固く黒い種にからまって詰まっている。


やまもも(山桃・楊梅)は、やはり暖地に育つ木で、近年は温暖化のせいもあって東京辺でも庭木として植えられて、梅雨どきには濃厚な赤色の実をたくさんつけた姿を見るようになった。

熟した実は直径2cmほどの球形で、表面に微小な粒だった凹凸がある。わずかな渋味をともなった甘酸っぱい味があり、ジャムに向いているかもしれない。

ムベと同様に関東の山では見たことがないが、南関東にも自生するらしい。

やまももの実は四国地方、ことに高知県の人々には特別に愛されるらしく、「これを味わわなければ夏がきた気がしない」というくらい熱狂的に好む人もあるようだ。