うつぼぐさ・さんかよう 

うつぼぐさ(靫草)は、初夏に咲きはじめ、夏が終わるころには花の形のまま茶褐色に枯れてしまうので、夏枯草(かこそう)とも称ばれている。夏枯草は漢方の薬名で、消炎、利尿などに効果があるといわれる。

うつぼとは、昔の武士が矢を入れて右の腰につけた靫で、花の咲いた形がこれに似ているという。

小さな紫色の花がびっしり柱状の穂になっているので、花時に見れば、誰でも一度で覚えられるだろう。

若い葉や茎は、お浸し、天ぷらなどにして食べられるのだが、花ほど特色がないので、そうたやすく見つけられないかもしれない。

花穂の天ぷらもいいが、花だけをばらばらにほぐし、茶漉しなどを使って酢を落とした熱湯に30秒程浸す。さらにもう1度酢につけて水で冷やしてから水気を切ってサラダや和えもののトッピングとして飾ることができる。

花穂の形を活かして、少し茎をつけて切ったものを箸置きとするのもしゃれているのではないだろうか。


さんかよう(山荷葉)は、割合明るい林の下などに生える大型の草だ。梅雨の蒸し暑い時期、少しでも涼しさをと選んだ沢沿いの道で、この大きな葉と白く咲く花に出合うと一瞬ほっとして、ほんとうに涼しい思いになる。

大きな葉をハス(荷葉)に見たてて、山のハス、さんかようと名づけられたのだと思う。

花のあと、実は12、3mmの楕円球形になって藍色に熟す。表面に白い粉をまぶしたようになっているのも多い。山での道々、幾粒かをつまんで口に入れると甘酸っぱく、これもまた山歩きの疲れを束の間忘れさせてくれる味だ。