ほととぎす・うぐいすかぐら 

ほととぎす(時鳥草、杜鵑草、油点草)は、秋に咲く花の紅紫色の斑が鳥のホトトギスの斑点に似ているので、そのようによばれている。山を歩いていて、このホトトギスに気づくのは花時の秋だろう。ホトトギス、ヤマジノホトトギス、ヤマホトトギスなどは花の形が少しずつ違い、また、黄色い花が咲くタマガワホトトギスやジョウロホトトギスもあるが、みな同じ仲間である。

山菜として食べられるのは、春の新芽が少し伸びた頃だ。油点草ともいわれるのは葉の表に地色より濃い緑の斑(油点)があるためで、裏側には紅紫のすじが入る。

春、葉が2、3枚出た頃に摘んで、さっと茹でて水で冷やし、酢みそ和えにするかサラダに混ぜるなどする。


うぐいすかぐら(鶯神楽)は、スイカズラ科の低木で奥武蔵から八ヶ岳の山麓まで、関東周辺のどこにでもある。

春に濃いピンクの小さな花が2、3輪ずつ枝から垂れ下がって咲き、初夏には甘酸っぱい汁を含んだ紅い実になる。

以前、私はこの実を山を歩きながら摘まんで口先を潤す程度には知っていたが、その後、吾妻小舎の主だった遠藤守雄さんから、東北の山には、その近縁のクロミノウグイスカグラがあってクリーム色の花と青黒い実をつけるのだと教えてもらった。 

先日、近所の書店で、ひと目で「チョッコーさんの絵」とわかるたらの芽とわらびの描かれたカバーに惹かれて『北海道山菜誌』(山本正・高畑滋・森田弘彦/北海道大学図書刊行会)を購入した。

といっても、私はチョッコーさん、すなわち坂本直行さんに直接お目にかかったことはない。ただ、望月達夫さんや島田巽さんが日本山岳会で直行さんと親しくされ、お二人から折にふれてチョッコーさんのお噂を伺うことが多かったので、失礼を省みず、ついチョッコーさんとよんでしまうのである。

そして、この『北海道山菜誌』を読んで、クロミノウグイスガグラの実が、すなわちハスカップであることを知った。

北海道ではこの小木が平地の湿原に群生しているといい、売り物のジャムやお菓子に加工するほどの収穫を得ることができるらしい。