うめ・かえで
 
 
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うめ(梅)といえば、食品として利用されるのは実で、季節は梅雨のころである。梅干、梅酒、梅びしお(醤)のほか、煮梅、シロップやジャムなど数えきれない。

冬から春にかけての低山を歩くと、麓から中腹にかけて集落や畑、川辺の道沿いなどで、早ければ12月下旬ごろから3月末ぐらいまで、うめの花に出会うことが多い。

手入れのゆきとどいた庭木や盆栽であったり、あるいは見捨てられた梅林のつる草に絡まれた木立であったりして、木の境遇はさまざまだが、冷たい空気の中で健気に花を咲かせていて、なかなかよいものである。

常陸の難台山や奥多摩の日ノ出山などから陽が西にかたむく頃、里近くにおりて来たとき、どこからともなく香りが漂ってきて、あぁ、山里の春だなと感じたことを思いだす。

「桜折る馬鹿、梅折らぬ馬鹿」ということもある。

数輪の花や蕾のついた梅の小枝を箸置きにするのは、どうだろうか。

 
 
たまたま先日、テレビでかえで(楓)が取りあげられていた。秩父地方の地元特産食材の開発を紹介する場面で、かえでには冬の寒さで樹液が凍らないように糖度が高くなる性質があるので、その樹液を採集して、それを菓子作りなどに活かそうというものである。

何十本ものかえでの幹に電気ドリルで穴をあけてビニール管を差込み、大きなポリタンに樹液を採集する。なんだか楓の樹に気の毒なような光景だった。

それを見ていて思い出したのが、坂本直行さんの『わたしの草木帖』か『わたしの草木漫筆』のなかの1挿話だった。北海道の開拓地の子供たちは、冬になるとカエデの切株や折れ枝についたツララに樹液が混じって甘いのを知っていて、それを折ってしゃぶるという話である。

なお、『モミジとカエデ』 (誠文堂新光社/昭和43年)によると、日本の山野には20余りの野生種があるという。

かえでは5月ごろの開きはじめた若葉を天ぷらにして食べられることは、かなり以前から知っていた。

数年前に奥武蔵の竹寺で、竹尽くしの器でいただく精進料理をご馳走になったおり、早春のことで、まだ、かえでは芽を吹く前だったが、天ぷらの一品に紅葉したかえでがあった。前年の秋、美しい紅葉を拾って塩蔵しておき、塩抜きして揚げたのだという。料理に彩りを添える演出に感心した。