みょうが・からすうり

みょうが(茗荷)は野生植物図鑑や山菜の本に載っているが、東京周辺ではほとんどが栽培されているようだ。

ただし、わが家のみょうがは、長年、猫の額ほどの庭の隅に生えていて、毎年7月中旬から10月初めまで、次々と花芽をだす。俳句では夏の季語になっているが、夏本番の猛暑の頃には出方が少ない。

なつみょうが、あきみょうがという呼び名もあって、以前は品種の違う別物かと思っていたが、そうではなくて、単なる出る時期の違いだけのようだ。

独特の香りと辛味があるので、刺身のつまや、そうめん、冷やっこなどの薬味、和えもの、汁の実、漬物と使い道は様々だ。

東京には地下鉄丸の内線の駅名に茗荷谷が残っているが、これは文京区の小日向辺り。お茶の水駅に近くにあり、山の本を多く置く書店、茗溪堂の名もそれに由来している。

最近のテレビ放送で知ったことだが、今の新宿区の辺りでも、昔は盛んに栽培されていたらしく、早稲田茗荷という品種もあるそうで、その生き残りを探している人がいるという。

40年近く前、苗場山へ昌治新道から登ったときに、山道の傍らに盛んに花を咲かせているみょうがを見つけて採り、テント泊まりの夕食に香味を添えたことがあった。

みょうがの花は、うすいクリーム色で蘭にも似た優しい姿だが、1つの花は咲いたら1日限り、大きな花芽だと20個以上も蕾がつまっているが、咲くとすかすかになってしまうので、食用にするのには花の咲く前に見付けることが肝心だ。

みょうがは、春の新芽、伸びて葉と偽茎になる部分が陽に当たって緑にならないうちに採れば、みょうがたけ(茗荷竹)とよんで、これもまた、刺身のつま、甘酢漬けなどにして食べられる。


からすうり(烏瓜)は、関東周辺ならば街なかから低山まで、どこにでも生えているつる性の雑草だが、近頃はあまり見なくなったとも聞く。

わが家のまわりには、まだけっこう自生していて、塀や植木に長いつるを絡ませているのをよく見かける。はびこると取り除くのが大変だ。

晩夏から秋にかけての候、夕方になると、5つに分かれた花弁の先が細く裂けて網目状になり、白いレースを広げたような花を咲かせる。

この花は、見方によっては幽霊のようだなどと気味悪がる人もある。しかし、それがやがて実になって熟すると美しい朱赤に色づき、秋の夕日に輝く姿などは、とても見ばえがする。

瓜であるからには、食べられるのではないかと思っていたが、案の定、『里山摘草料理歳時記』(篠原準八・佐藤秀明/東京書籍)によると、実の青いうちに採って塩漬けにするとよいと出ていた。

その方法は、実を2つ割りにして種とワタを取り、濃目の塩水で洗う。水を切り、多目の塩を振って落しぶたに重しをして1晩おき、塩抜きして食べる。こうした手間をかけないと、かなり苦味が強いらしい。

なお、近似種のキカラスウリ(実が黄色に熟す)の根から採れる澱粉が天花粉なのだそうだ。この澱粉も毒抜きをしないと食用にはならないという。