なのはな
 
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「なのはなや 化けし狐も 黄なるべし」と深田久弥さんが詠んだのは、昭和16~18年にかけ、鎌倉にお住いの時のことだったという(『九山句集』/卯辰山文庫)。

昭和の時代も半ばぐらいまでは、東京でも少し郊外へ出ると、春ならばどこにでも菜の花畠を見たものである。

その後、菜種油の需要が減ってくると、あえて菜の花をつくろうという人もなく、菜の花畠もいつの間にか姿を消してしまった。

しかし、近年になって、菜種油の風味が見直されるようになったのと、観光の集客や地域振興なども絡んで、菜の花畠が復活しているところもあるという。

昔、春先に丹沢の表尾根を歩いていると、麓の秦野盆地が菜の花で一面黄色に見えたものだが、また、そんな景色が見られたらいいなとも思う。

「なのはな」とは1種類の植物名ではない。アブラナ科のアブラナ、コマツナ、タカナ、カラシナ、ダイコン、ハクサイ、キャベツなどのほか、さらにブロッコリー、カリフラワー、ハボタン、ハナダイコン(ショカッサイ、ムラサキハナナ)なども、その仲間に入れてもよいのではないだろうか。花の色も黄が多いが、白、紫、淡紅色と多彩だ。

なお、花屋で切花として売っている菜の花は、ハクサイの1種から代々選抜して作られたものだそうだ。

今回は辰巳芳子さんの本で知った菜の花どんぶりについて書いてみようと思う。

材料は八百屋で売っている四角い束の菜の花でもよいが、手近に摘むことができれば何種類かを混ぜてもいいかもしれない。それらは、どれも蕾とその近くの若い葉だけを摘むが、摘みたてならばきれいに水洗いするだけでよい。もし、摘んでから時間がたっていて、萎れているようならば茎の下を少し切ってしばらく水につけておくとしゃっきりとする。

洗ったものは、しっかり水気を切って、2cmほどに刻む。1人分として一掴みほどを熱したフライパンにいれてオリーブ油を回しかけ、塩をひとつまみ加えて、さっと炒める。さらに酒としょうゆ少々を加えて火を止め、どんぶりに盛った熱いご飯の上にこんもりと乗せる。

あれば、ほぐしたカラスミを少し上に盛ると、さらに美味しいご馳走になるということだ。