おにぐるみ・がまずみ

おにぐるみ(鬼胡桃)の木は、水気の多い川岸や沼の畔などによく育ち、大木になるものも多い。

2年前の10月末ごろに近郊の低山に登った時のこと。その道筋にあるダム湖の端におりてお昼にしようと、場所を探した。そして、上から見当をつけておいた草地へ行く途中で、湿り気のある地面のそこここにくるみの大きな緑の実が落ちているのに気付いた。

数本のくるみの木があって、見上げる枝にも数個連なった実が下がっていた。

ふつう、食用にするのは、この実の中の種のさらに内側の仁の部分なのだ。

実を土に埋めたり水に漬けたりして外側を腐らせて取除き、種の殻を割らなければ食べられない。おにぐるみの殻は非常に硬く、くるみ割りがこわれるほどだ。しかし、味は一般に売られている外来種よりもよいという人も多い。

市販のくるみは簡単に割ることができるが、それらはヨーロッパやアメリカから輸入したもので、おにぐるみとは別種のものだという。

秋田県の角館には、おにぐるみを味噌漬けにした郷土料理がある。6月に青い若い実を採り、水と糠を毎日換えて1ヶ月間あくを抜き、その後1年ごとに味噌を換えて3年漬けるのだそうだが、大変な手間と時間だ。その漬かった実は薄くスライスして食べるというが、一度、味わってみたいと願っている。


がまずみ(莢蒾)は、10月の初め頃から実が赤く色づき始める。ミヤマガマズミ、コバノガマズミなど近い種類がいくつかあるが、実はどれも食用になる。

といっても、小さな実なので1つ1つ食べるよりは、完熟する前に集めてホワイトリカーなどに漬け果実酒にされることが多い。

霜が降りる頃になって完熟し、表面に少ししわがよりはじめた実は生食できる。甘いが、硬い種が口に残る。

ある程度の量が集められた時は、煮て、硬い種を濾し取ったあとで砂糖を加えて煮詰めるとフルーツソースができ、さらに煮て濃度を高めるとゼリー状になってジャムにもよい。