ききょう・きくいも

ききょう(桔梗)は秋の七種のひとつ、古い時代には岡土々伎(おかととき)といって、ツリガネニンジン(ととき)と同様に食用にされていたらしい。

ききょうと聞くと、いまでは花屋の店先の切花や、鉢植のものを思い浮かべる人のほうが多いかも知れない。しかし、数十年前には東京近くの低・中山の山道の脇や草原で自生の花もよく見かけたものである。

日当たりのよい尾根上などでは、栽培された切花などより大きく、色の濃い花もあって、自然を彩る歓びに輝いているようにも見えた。

いまとなっては、自生の花を見つけたとしても採取するのはしのびないが、庭の片隅にでも植えてあれば、毎年芽を出して花を咲かせるので、その数輪を料理してみるのもよいのではないだろうか。

花は椀種や酢のものにもなるが、天ぷらがおいしい。小麦粉にコーンスターチを混ぜたころもを、表は薄く、裏は厚めにつけて高温で手ばやく揚げると、美しく仕上がる。

春の新芽も、和えもの、汁の実になるし、根は咳どめの薬にも使われる。


きくいも(菊芋)は、人家がまばらになった道路端や、林の縁、段差のある畠の土手などで濃い黄色のヒマワリを小形にしたような花が人目を引く、人の背丈を越すほどの草だ。

北アメリカ原産で幕末の横浜開港のころに渡来したという。第二次世界大戦の戦中・戦後の大変な食糧難をしのぐために、わが国の空地という空地に植えられた。子供のころ、この芋で飢えをしのいだ憶えのある方も、まだいらっしゃるだろう。かつては到る処に植えられたその末裔が、いまでは畠ではないところでたくましく生きのびている。

なお、昭和50年刊の『野草を食べよう』(西丸震哉・丸山尚敏/実日新書)には、「これから地球の寒冷化を迎え、凶作が見込まれる現在、寒さに強いキクイモをもっと栽培してもよいのではないか」とあり、30数年前にはいまの温暖化とまったく逆の予想が書かれているのが、なんともおかしい。

きくいもの芋(塊茎)は飼料にされたり、果糖、アルコールの原料とされることもあるらしい。食品として調理する場合は煮くずれに注意し手早くすることだ。揚げものにするのが一番かもしれない。

また、手間はかかるが、味噌漬もおいしいという。まず、8%の塩水を沸かして冷ましたものに1〜2日漬けたあと、半日天日に干す。それを合せ味噌を焼酎でのばしたものに7〜10日漬ければよいと、『続・山菜入門』(山田幸男・三重子/保育社)で読んだ。

新芽は茹でて和えものなどにするとよいそうだが、わたしは、まだ味わったことがない。