たちあおい・むくげ

たちあおい(立葵)は、盛夏から秋口にかけて、真っすぐに立った太い茎に大型の紅、紫紅、淡紅、白、淡黄などの5弁一重、または八重の花を下から上へと数輪ずつ咲かせていく。

わたしが子供のころは、近所の住宅の庭にも、郊外の鉄道駅のプラットホームにもたくさん植えられて妍を競うように咲いていた。
 
この花が食べられるとは、しろつめくさの項で紹介した平谷さんの本ではじめて知った。

野菜としておなじみのオクラが同じアオイ科で、トロロアオイに近い仲間であることは知っていたから、もしかしたら食べられるのではないかと思っていたが、やはり食べられるとわかって嬉しくなってしまった。

平谷さんによると、生でサラダにするか、花弁の大きさを活かして、いろいろなものを巻いて食べるのもよいという。


むくげ(木槿) は、はちすともいう。これもアオイ科の木だが、南国を象徴するようなハイビスカスも同じアオイ科の仲間である。

「槿花一朝の夢」とはかなさの例えにされるように、それぞれの花は朝咲いて夕方にはしぼんでしまうが、花期は長く、梅雨のころから晩秋まで咲き続ける。

しぼんだ花はポタポタ落ちて、そこに雨が降るとぬるぬると滑りやすい。日本の都市で街路樹にしたら事故が起こってしまうのではないだろうか。

東アジア原産で、お隣り韓国の国花でもあるが、世界中に広まっているようだ。

40年も前にヨーロッパ・アルプスのトレッキングに行ったおり、行きがけに立寄ったアテネやローマでは街路樹として植えられ、花盛りの樹を多く見た。どちらの街も夏は雨が少ないから、ぬれた落花で滑って転ぶ心配もないのだろう。

むくげの花は、そのぬめりを活かして食べる。お椀に、とろろこんぶと叩いた梅干、そして一重の白いむくげ1輪、底を切って芯を抜き花弁だけを入れて熱湯を注ぐとしゃれたお吸い物ができあがる。
 
ハイビスカスは、以前、友人の海外旅行のおみやげに、この花の「お茶」をいただいた。透明な赤い色と、かすかな酸味が漂う飲み物だった