くず・すすき=おばな

どちらも秋の七草の一つで、野山でこれらの花が目につきはじめると、空が高くなり、風の涼しさが感じられるようになる。
 
くず(葛)は各地に自生している。その根を砕いて水に晒し、精製して粉にしたものが葛粉で、昔からお菓子や料理に広く使われてきた。

山を歩くようになってから、くずの若いつるや葉もお浸しや和えものとして食べられると教えられたが、かなり太目で毛深いその新芽は、あまり食べてみたい気がしなかった。

最近になって、その紅紫色のきれいな花も食用になると判った。

下から上へと順次咲き上がっていく花の頃合に開いたものを、1輪ずつにばらして、酢を落した湯で茹でる。甘酢で酢のものにしてもよいし、水分を切ってクッキー風の焼き菓子に1輪ずつ乗せて焼いても楽しい。

食べることとは別だが、くずの茎の繊維を緯糸として織ったものは丈夫なので、昔は袴などに使われたという。現在も、ふすま紙や壁紙として用いられているようだ。

わたしは、くずのつるで編んだ篭が好きだ。あけびなどよりも見ためが柔らかく、暖かい感じがする。フラワーデザインや染めの花、ペーパーフラワーにかかわっていた頃、くずで編んだ手つきの篭を愛用していた。


すすき(薄)=おばな(尾花)は、お月見の頃には、都会の花屋の店頭にも必ず並ぶから知らない人はいないだろう。

雑司ヶ谷の鬼子母神には、江戸時代から伝わる郷土玩具「すすきみみずく」がある。玄関などに飾ると魔除けになるともいわれ、大中小とあって結構な値で売られている。

さて、ここから先は、それと同じでは申しわけないので「おばなふくろう」の作り方といこう。

材料は、若いすすきの穂20本余り、貝殻菊(黄)のドライフラワー2輪(大きさを揃えて)、アヤメの実1個、フラワーデザイン用ワイヤーの28番くらいの細いもの数本、接着剤(木工ボンドなど)。

すすきは穂の開く前の若いものがよい。穂の下20cm余りで切って、図のようにワイヤーで束ねることの繰り返しで、ふくろうの形を作り、目とくちばしをつけると出来上がり。背の間から中心の軸にひもを通して輪にすれば、壁に掛けられるし、中心の軸をまとめる際に少し長い竹串を1本入れておくと、植木鉢の土に差すこともできる。すすきの穂が乾燥すると、おのずとふっくらした姿になってくる。

以上は、いつも食べることばかりでもあるまいと、40年ほど前にフラワーデザイン教室で習ったことを書いてみたのだが、『大辞林』を開いてみたら、食品というのではないが「尾花粥」というのが載っていた。

宮中で8月朔日に厄病除けに用いたもので、ススキの穂を黒焼きにして粥に混ぜたものだそうだ。