あざみ・おやまぼくち

あざみ(薊)は日本には50種ほどあるといい、いずれも根や葉は食用になる。根は掘るのに大変だし、それに自生しているものを根こそぎ採ってしまうのは問題があると思う。

山歩きのついでに採取できるのは若い時期の茎と葉だろう。ただし、鋭いとげがあるので、それなりの注意がいる。葉は生のまま天ぷらか、とげと固い中軸を切り取ってから茹でて、和えもの、炒めものなどにする。茎は茹でて皮をむけば、同じように食べられる。

もう7、8年は前になるが、笠取山の無人小屋への途中、沢沿いの道を登りながら、まだ茎の伸びないうちの若葉を採ったことがある。そして、夕食の時、ウィンナソーセージと一緒に炒めると、ソーセージの脂っこさを和らげる、よい付合せになった。


おやまぼくち(雄山火口)とは、昔、この草の葉裏と茎に密生する白い柔らかな毛を乾燥させて、火打石を打って出る火花をこれに移して火口にしたことに由来する名だという。

姿形は、栽培される根菜のごぼうの葉によく似ている。

若い葉はよもぎと同じように草餅の材料にされ、山梨県の甲州市(塩山や勝沼の辺り)では、もちぐさといえば、よもぎではなく、このおやまぼくちを指すことが多い。

特有の香りとほろ苦さがあり、葉の裏側にある多くの毛が餅のねばりを強くするのだという。

甲斐大和の道の駅で売っている草餅がこのおやまぼくちを使ったもので、なかなかおいしかった。

また、この葉を乾して粉にしたものは、そばを打つ時のつなぎとしても使われるという。

若いうちの生の葉は、天ぷらや素揚げでおいしく食べられる。