つりがねにんじん・おけら

つりがねにんじん(釣鐘人参)は、とときともいう。先日、三好まき子さんから「長野に行って、とときを食べてきました。からすのえんどうも食べました。どちらもおいしいでした」とメールをもらった。

食用にするのは春から初夏に出る新芽で、あまりくせはないから、お浸し、ごま和えなどの和えものや、汁の実にしてもよい。

摘む際の見分け方は、葉が車軸のように輪生するのと、折った茎が中空で白い乳液が出るので、それを確かめる。

かたまって生えていることが多いが、それをみんな採ってしまわずに、何本かを残しておくようにしたい。そうすれば、初秋のころになると、薄紫の鐘状の花が葉と同じように何段にも輪生して美しく咲き、それが風にゆれるところなどはなかなかの風情である。

なお、つりがねにんじんは、先にこの11話で紹介した、そばなとは近縁のききょうの仲間で、花の形や、茎が中空で白い乳液が出るところなどがよく似ている。


おけら(朮)は「山でうまいはおけらにととき」と歌われ、とときと対にしておいしい山菜とされている。

若い芽は白毛をまとって柔らかいが、やがて縁にとげとげのある固い葉になる。その新芽を見分けるには、近くに前年の花の名残りをとどめた枯れ茎があるはずなので、その花の外側を包んでいる魚の骨を思わせる複雑な形の苞葉を目印にするとよい。

食べ方は、汁の実、お浸し、和えものなど、つりがねにんじん(ととき)と同様に。

おけらは、古くから邪気を祓うといわれ、お正月の屠蘇散の中に加えられていると聞く。また、京都八坂神社の大晦日のおけら参りの火種には、このおけらの乾したものを混ぜて焚くのだそうだ。