もみじいちご・しろばなへびいちご

初夏から梅雨あけのころまでが野山のいちご類の季節で、この仲間は結構多く、わたしが知っているものだけでも10種類ほどはある。

大きく分けて草いちごと木いちごがあり、今回取りあげたなかでは、へびいちご類が草いちご、もみじいちごは木いちごで、木いちごにはとげのあるものが多い。

もみじいちご(〈紅葉〉苺)は、山道のかたわらによく見かける小形の木いちごで、葉の形がカエデ(楓=紅葉)に似ているためにつけられた名だ。春、割合に早くから、枝先に白い5弁花をうつむいて開く。

果実は、6〜7月の梅雨のころ、黄色に熟す。果汁の詰った小さな粒々がぎっしり丸くかたまった実は、そのまま食べてもよい味だ。

ジャムにも果実酒にもなるが、枝には鋭いとげがある。

山道を歩きながら、ちょうど手をのばせば届くあたりに実がなるので、二つ三つとつまんで口に放り込むと、いっとき口の渇きをいやし、息のはずみをしずめてくれるような気がする。蒸し暑い季節の山歩きの小さな楽しみだ。


しろばなのへびいちご(白花の蛇苺)は、沢辺の小広い平らなど、花崗岩の風化したようなさらさらの砂地の場所によく群生している。親株からランナーを出して殖えるので、次々と広がるらしい。

栽培されているいちごの原種に近い種だと聞いたことがあるが、確かに売物のいちごを小形にしたような実で、よく似ている。味もへびいちごよりずっとよく、香りがあり、バターのような滑らかさがある。

奥秩父や八ヶ岳の周辺で、休憩した時などに近くで見つけて摘み集め、味わったことがある。たくさん採れればジャムにするのがおすすめだ。