へびいちご・なわしろいちご

初夏から梅雨あけのころまでが野山のいちご類の季節で、この仲間は結構多く、わたしが知っているものだけでも10種類ほどはある。

大きく分けて草いちごと木いちごがあり、へびいちご類が草いちご、なわしろいちごは木いちごで、木いちごにはとげのあるものが多い。

へびいちご(蛇苺)は、子供のころ家の周辺にいくらでも生えていて、よくままごとに使った。「毒があるから食べてはいけない」といわれていたが、それは地面近くのきたないものを子供が口に入れないようにと考えた、大人の方便だったようだ。

そんなことで、「へびいちごは毒」と思いこんでいる人はかなり多いようだが、実は毒ではない。

しかし、実が小さすぎて水分が少ないためにポソポソした食感で、おいしくはない。

いっとき見かけなくなっていたが、この3〜4年わが家の庭で、また盛んにはびこるようになった。


なわしろいちご(苗代苺)も以前は近所で道端などによく見られた。ピンクの小花が5〜6輪ずつ枝先につくが、花弁は半開きで、萼が5弁のように見える。実は熟れると透き通った深紅の粒々がかたまって美しい。幾粒かの実をまとめて口に入れると甘ずっぱい果汁が味わえるが、果実酒やジャムの材料になる。

細くとげの多い蔓状の枝が背丈は30cmほどながら、2mぐらいまで伸びて広がるので、川原などで群生していれば実は集めやすい。

先日、新聞の「まちかど四季散歩」というコラムで、この花の蜜を好む蛾の名を覚えた。黒地に白い斑紋がちょっとシャレている小さな蛾だが、この斑紋を窓に見立ててマドガと称ぶのだそうだ。