ひるがお・いのこずち

ひるがお(昼顔)は、ビル街の植込みの下や、コンクリート塀とアスファルト舗装道のすき間など、どこにでも生えて、夏の真昼にピンクの花を咲かせるので、知らない人はいないと思う。

でも、この新芽が食べられると知る人は、まだ少ないのではないだろうか。柔らかい茎のなるべく太いのを選んで、先のほうだけを摘む。茹でて水に放してしぼり、ごま和え、辛子和え、炒めものなどにする。くせがなく、だれにでも向く味ではないだろうか。

ひるがおは、自家受粉しないので、めったに種子はできないのだそうだ。それでも各所にはびこるのは、地下茎がどんどん伸びてひろがるからだという。その根っこを、かき揚げにするとおいしいと、どこかで読んだ記憶があるが、これはまだ試していない。


いのこずち(猪子槌、牛膝)は、秋に草のかぶった山道を歩いて、かぎ爪のようなとげのついた実が、衣服のすそのほうにたくさんついて、取るのに苦労した覚えのある人は多いのではないだろうか。

いのこずちの名は、角ばった茎の対生に葉がつく節のところが、ふくらんでいるのを、猪の膝頭と、ものを叩く槌にたとえたのだと『雑草のはなし 見つけ方、たのしみ方』(田中修・中公新書)で読んだ。

いのこずちも、春にはおいしい山野草のひとつとして、その新芽を味わうことができる。梅雨どきを過ぎると硬くなってしまうので、六月初めごろまでが食べどきだろう。蕾、葉、茎とも茹でて水に取り、和えもの、浸しもの、汁の身などにする。

牛膝というのは漢方名で、中国では猪ならぬ牛の膝に見立てたのだという。利尿、強壮などの効能が根っこにあるそうだ。