そばな・こごみ(クサソテツ)

そばな(蕎麦菜、岨菜)は、山道脇の傾斜地や、伐採跡の植林地などで、夏の終りごろ鐘形のうす紫の花を揺らす姿は、早くから知っていた。しかし、その新芽がおいしい山菜であると知ったのは、山歩きをするようになってからかなり後になった。そうと知っても、新芽がどのような形で萌えだすのかを知らなくては、採ることもできない。

つい先だって、浅間嶺の稜線を歩いたおりに、「あっ、これがそばなではないか」と、ふと眼にとまった草があった。試しに摘んでみると、茎が中空で、白い乳汁が出る。確かにそばなだった。それから道をたどりながら、何本かずつ見つけることができ、持ち帰ったものを夕食の膳にのせることができた。

茹でて水にさらし、お浸しにしてみた。やや苦味がつよいが、初めての濃厚な春の味を感じることができた。


こごみ(クサソテツ、草蘇鉄)は、わらび、ぜんまいなどと同じシダの仲間だが、アクが強くないので、手間をかけずに味わうことができる。

たいてい一定の範囲で群生していて、5〜6本以上がかたまって一株となり、林床や沢の縁などに点々と生えていたり、明るい傾斜面をひときわ明るくするような浅緑の葉をひろげていることも多い。

山菜としては、葉の先端がまだしっかりと巻きこまれている若いものを選んで根元から折り採ればよい。

たくさん採れたとき、わたしは、茹でて水に取り、固くしぼったものを3、4cmに切って、ベーコンの細切と炒め、味は塩・コショウで調える。

油分と相性がよいので、ごま、くるみ、落花生などとの和えものにしてもよい。

昔、湯の花温泉の宿で、巻いた葉先が径4cmほどもある大きな一本を、四角い冷やっこの上にのせて出されたことがあったが、見事な一皿になっていた。