すみれ・たんぽぽ

すみれ(菫)は日本に自生しているものだけでも50種以上もあるという。その多くが、すみれの仲間だとはすぐ判るのだが、正確な名を知ろうとすると、小さな花や葉の部分部分を細かく調べなければ判断できず、とても難しい。わたしなどは「すみれの1種です」としかいえないものも多い。

そのすみれが食べられることは知っていたが、花をジャムや砂糖漬けにするのは欧米の食文化であるらしい。チョコレートをすみれの葉に形作り、砂糖漬けの花を飾ったものや、生のすみれをルッコラなどの葉と一緒にしたサラダを雑誌のカラーページで見た。

わが国では、東北地方や長野県などで、わさびに似たスミレサイシンの根茎を、すりおろして、しょうゆなどで味つけし、とろろのようにして食べると聞いたことがある。

また、青森県などでは、オオバキスミレの葉を「のりな」と称して、うす塩の一夜漬けにし、おにぎりを包むなどして食べるという。ちょっとねばり気のある食感がよいそうだ。全草をゆでで浸しものなどにしても、なかなかの味という。


たんぽぽ(蒲公英)は、小さな子供が、まず最初に覚える花の名前のひとつではないだろうか。まだ都会でも駐車場の隅や、街路樹の下などに残っているし、全国のどこででも見られるのではないかと思う。

今もこの花を摘んだり、毛糸のポンポン玉のような種子の冠毛を一息で吹き飛ばして遊ぶ子はいるのではないだろうか。
 
「これは昔なじみのたんぽぽではない。どことなく剛直で軸がたくましい。花びらも寸づまりで雅なところがない。これは西洋たんぽぽなのだ。」と書くのは杉本秀太郎『春を楽しむ花ごよみ』(コロナブックス/平凡社)だが、少なくなったけれど在来種のカントウタンポポ、エゾタンポポなども、まだちゃんと生き残っている。

たんぽぽの若い葉は生でサラダでもよいし、ゆでたり、いためたりしてもよい。花は、がくの側にころもをつけて天ぷらにすると美しい。根もきんぴらにして食べられるという。サラダはドイツ人、フランス人もよく食べるという。