しゅんらん・かたくり
 
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しゅんらん(春蘭)は、ほんものに出会うよりずっと前、子供のころ家にあった染付けの重ね鉢や漆椀の絵柄で、また風呂敷の模様で知っていた。後年山を歩くようになって、「あ、これだ」と実物を見る機会にめぐまれた。

低山の道のほとりで、3〜4月頃になると普通に見られる。緑色に紅紫色の斑点がある地味な花だが、ごくたまに見つかる色変わりの花は、山草家の間では数十万円の値がつくものもあると聞く。

昨年、中央線沿線の御春山へ薮をこいで登った時は、ひと群に6〜7輪も花をつけた株が次々にあって、そのうちの何輪かずつを頂いてきた。

塩漬けにして保存し、吸い物に一輪加えたり、塩を洗って梅酢に漬けたものは、湯を注いで蘭茶にすると、ほのかな香りも楽しむことができた。

 
 
かたくり(片栗)も春の低山を彩る花だ。昭和の前半ぐらいまでは武蔵野の雑木林にもいくらでも見られたらしいのだが、今は特別に保護された群生地のものが、「今週一杯が見頃です」などとテレビニュースになる時代になってしまった。

もう30年近く前、新潟の粟ヶ岳から宝蔵山へ歩いた5月初旬、宝蔵山の下り道では文字通り足の踏み場に困るような、花盛りのかたくりの大群生地を歩いたことを思い出す。

かたくりは、主にその厚く柔らかい葉をゆでで、酢みそ和えやサラダにするが、人によっては、おなかをこわすので、食べ過ぎない用心が大事だ。花はまことに可憐だが、葉は紫の油点のせいか、ちょっと不気味な気がするのは、わたしだけだろうか。

山菜として食べるのとは別のことだが、片栗粉というのは、本来、このかたくりの根を掘りあげて、乾燥精製して粉にしたものだったが、たいへん手間がかかるので、現在の片栗粉はほとんどが、馬鈴薯の澱粉で代用されるようになっている。