かんぞう・よもぎ
 
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かんぞう(萱草)を甘草と書くのはまちがいで、こちらの甘草は漢方薬として根を使うマメ科の植物だそうだ。

春の若葉を食べるかんぞうには、ヤブカンゾウ(八重咲き)とノカンゾウ(一重咲き)があるが、この時期には区別がつかないし、どちらも同様に味わえる。

山麓近くの少し湿り気のある明るい場所に、縦二つ折になった2枚の葉を折りたたみナイフの刃を半開きにしたような形で、いっせいに芽を出していることがある。

手でちぎると葉先がばらばらになるので、根元の白いところを刃物で切取ると、逆さ人の字形に採ることができる。

この形のままで、うすい衣をつけたてんぷらにすると姿もよく味もよい。のびると同様にゆでて酢味噌和えもおいしい。

ばらばらになってしまった葉先は、ゆでてきざんで、酒しょうゆで味つけし、炊きあがったご飯にまぜると、おいしい菜飯になるそうだ。これは、『山のごちそう』渡辺隆次著(ちくま文庫)で知ったので、この春ぜひ試してみたいと思っている。

 
 
よもぎ(蓬)も道端や原っぱでよく目につく草だ。冬の名残りでまだ寒く雪が舞ったり霜柱が立つような頃、すでに芽を出している。初めは10cmぐらいの平たい姿で昼間は太陽の光と熱を受け、夜は葉を立てて寒気を防ぐのだそうだ。そうして夏には1mほどにも生長するが、餅草として摘草の対象になるのは春先の新芽のころだ。葉の裏に密生している白い毛は、水分を逃げにくくする構造で、よもぎが荒地の乾燥に堪えて生き残って来たことの現れだという。この白い毛が絡みあって、草餅のねばり気を強くするもとになる。

そして、あの香りは、荒地で生きぬくためによもぎが身につけた、さまざまな精油成分によるもので、種々の薬効があるという。『身近な雑草のゆかいな生き方』稲垣栄洋、絵・三上修(草思社)にそう書いてあった。

よもぎは、うすい衣で揚げたて天ぷらもおいしいが、わたしは春がくると、よもぎを搗き込んだお彼岸のぼたもちの味がなつかしい。