くりたけ・しいたけ

くりたけは、40年も前に、奥多摩の三頭山からオオマテイ山の尾根をへて奥多摩湖の深山橋へおりる途中で、古い切株に群生しているのを、同行した奥多摩山岳会の先輩たちに教えられておぼえた。

くりたけは株状に出ることが多いから、見つければ必ず汁の身にするくらいは採れるし、よいだしが出る。炊き込みご飯もおいしい。

くりたけは毒のあるニガクリタケとまちがえないようにしなければならないが、わたしの経験では、ニガクリタケは割合小ぶりで色がわずかに緑っぽい。疑わしければ一口噛んでみて、苦味を感じればやめたほうがよい。そのくらいでは中毒はしないそうだ。

くりたけでは、そのやり方で一度もまちがいはしなかったが、それよりも前に、やはり奥多摩山岳会の例会山行で、何種類ものきのこを先輩たちから「これは食べられるのだから」と頂戴して帰った。

翌日の晩にせっかくのきのこだからと、茶碗蒸しをつくって食べた。その夕食が終ったところへ先輩のひとりが「あのきのこどうした」と遊びに来た。「さっき、茶碗蒸しで食べてしまった」というと、「ご馳走になろうと思ったのに、おそかったか。1時間もすると、腹が痛くなるぞ」と、捨てぜりふを残して帰っていった。その後、ほんとうに腹痛が起こり、一晩中、なやまされたのだが、どのきのこが悪かったのかは判らずじまい。翌日には一応おさまったが、1週間ほどは、なんとなく調子がでなかった。


天然のしいたけは日光の高山の登りで倒木の上に列をなして生えているのを見つけたのが最初の出合いだったと思う。その時は背負っていたザックを放りだして夢中で採った。栽培ものよりもずっと香りが高く、とてもおいしかった。

しいたけは条件がととのえば、秋ばかりでなく春にもでるので、採取する機会は多い。また、各地で栽培されているので、林の中などに、古い腐りかけのほだ木が山積みに捨てられていることがある。そのほだ木から大きなしいたけが、たくさん顔をだしていて、ありがたくいただいて帰ったこともある。

沢に架かった橋の真中に1本だけ生えていたこともあるし、立枯れの木のやっと手が届くほどの高い所に、掌ほどの大物を見つけたこともある。