はなびらたけ・ますたけ

まだ夏の暑さが残る、1000〜2000メートルの山で採れて、見まちがうことのない茸は、この2種だと思う。

はなびらたけは、ナイロンのフリルテープを半球形のうず巻き状にふんわり巻いたような形で、少し透明感のある、ベージュ〜灰色の大きな塊りだ。

この茸を教えてくれたのは、30年以上も前に笠取小屋の主だった田辺正道さんだったが、田辺さんは「カラマツメータケ」と称んでいた。甲州、一ノ瀬の辺りでは、そう称ぶようだ。「メータケ」は舞茸の意味らしい。「ラーメンのつゆに入れると最高だよ」と教えてもらったが、たしかによいだしが出る。

人によっては、歯ざわりに特徴があるので、和えものや、炊き込みご飯、いためものがよいともいう。

落松林の地上に出るので、下草の少ない落松林で気をつけて歩けば、見つけることができるだろう。


ますたけは、針葉樹の倒木や、立木でも一部が折れたり枯れたりしたものや、古い切株などに生える大型のきのこだ。肉厚の凸凹した半円形を不規則に重ねたような姿で、若いときは鮮やかなオレンジ〜朱色をしているから、目につきやすい。

この茸も、その頃の笠取小屋に、手伝い半分の居候をしていた佐藤勤さんにもらったのが、最初だった。その時は、もらった茸を見た田辺さんが、「これは、もうぎりぎりだよ、これ以上老化したら、もううまくもなんともないから、急いで食べたほうがいいぞ」といって、「この茸は若いうちに限るんだ。水分を多く含んで、耳たぶぐらいの柔らかさと弾力があるのが、いちばんおいしい」と教えてくれた。

そういう若いますたけは、切ると魚の鱒の切身のような色をしているので、ますたけと名づけられたという。

適当に切ったものをカレーに入れれば、鳥肉だといっても通用するし、いためて、オイスターソースなどを加え、甘辛に調味すればたいへんおいしい。天ぷらにしても結構だ。

ただし、生食すると中毒するから注意が必要で、よく火を通すこと。

田辺さんの話の通り、老化したのは固くなって、ボソボソとコルクのかけらのような感じになってしまう。