すべりひゆ・いぬびゆ

どちらも、ごくありふれた雑草で、街中でも目にする機会はあるはずだが、意識してみたことがある人は、それほど多くないのではないだろうか。

すべりひゆは、乾燥に強く炎天下の庭の隅や、畠の周囲などに、四方に這うように広がっている。近年、夏の鉢花などとして、園芸店や花屋でよく見かけるポーチュラカという草花がある。花は昔懐しい松葉牡丹にそっくり、茎と葉はすべりひゆによく似ているので、調べてみたら同じスベリヒユ科だった。ポーチュラカをご存知の方は、それに似た雑草を捜せば簡単に判るのではないか。ただしすべりひゆの花は同じ5弁花だが、ごく小さい黄色で目立ない。

わたしは、山菜としてのすべりひゆを『山のごちそう』渡辺隆次(ちくま文庫)で知ったのだが、最近知りあった美容師さんが、山形県の出で、「ひょうと称んで、郷里ではお浸しや、芥子じょうゆでよく食べます」と話してくれた。

『山のごちそう』に紹介されているように、ゆでた茎を干して保存し、それを戻してベーコンといためたり、油揚や椎茸と煮物にするという調理法も、しゃれていて、おいしい食べ方だ。

いぬびゆは、ひゆという名が似ているが、全く別のヒユ科の草で、道路端や狭い空地などでも、たちまち1メートル近くまでこんもりと茂ってしまうような、たくましさがある。