89. 滝子山   
         1985(昭和60)年10月9日

滝子山1590.3㍍は楽な山ではない。歩きだしの笹子駅からは約1000㍍の標高差があり、これを上下してくれば「あぁ、今日はくたびれた」ということになるだろう。

これも望月さんに誘われた山行だった。過去何回か滝子山には登っていたが、南からの尾根(寂惝尾根)を直登したのはこの時が初めてとなった。

計画では大鹿川をつめた先から廻りこんで登るつもりのだったが、ほどなく寂惝庵(某新興宗教の道場か)の脇に上を指す指導標があるのをご覧になれば「君、この道を登ってみよう」とのお言葉だ。

それではと取付けば、これがなかなかの尾根ではないか。急は急だが、その分ぐんぐん高度をあげて気分がよいし、途中の岩場も一味の妙を添えている。また振り返るたびに木の間ごしの富士山はより高くなってきた。「望月さん、この選択、よかったですねぇ」。



上 山頂からは大菩薩連嶺を縦に見通す展望が得られた。遠くは奥秩父主脈の連なりで、左に一番高いのは金峰山に違いない。

中 登りながら、一息いれては富士山の眺めを楽しんだ。

下 滝子山の三角点は最高点、すなわち山頂よりも一段下の平地にあって、2.5万図「笹子」には1590.3㍍の数字が記されている。山頂はそれよりも等高線にして3本、30㍍ほどは高いのではないだろうか。この時は、まだ三角測量の櫓がたっていた。

(2015.7)

長沢註 

寂惝尾根は「じゃくしょうおね」と呼ぶが、この「しょう」の部分の漢字がパソコンによってはうまく表示されない。りっしんべんの右側に尚の旧字を書く。なお、寂惝庵というのは個人が建てた研修小屋で、かなり前から使われてはいないように見える。したがって寂惝尾根という呼称もすたれ、単純に滝子山南稜と呼ぶことが多くなった。

中、下の写真はクリックすると大きくなります

横山厚夫さんのちょっと昔の山 カラー篇トップに戻る