四尾連湖、蛾ヶ岳
  1979(昭和54)年1月27、28日

四尾連湖を見たのも蛾ヶ岳(ひるがたけ)に登ったのも、このときが初めてだった。

市川大門から登って四尾連湖畔の水明荘に泊まり、蛾ヶ岳を越したあとは尾根伝いに女坂峠へ歩き、精進湖へおりた。

ご一緒したのは織内信彦さん、それに織内さんが勤め先の若い男女2人を連れてきた。初日は晴れていたが、2日目はお天道様が出ずに寒々しく、なんとなく気勢のあがらない日だった。

『快晴の山』『もうひとつの快晴の山』というご著書があり、「ぼくの行くところ山晴れざるはなし」と色紙に書く織内さんにとっては、きっと不本意な日の蛾ヶ岳登山であったに違いない。



上 このあと、私は2度蛾ヶ岳に登った。1997年1月には山村正光さんの先導で、大森久雄、泉久恵、山本健一郎の諸兄姉とやはり水明荘に泊まって登り、2011年1月にはロッジ山旅泊の翌日に長沢君の車で湖畔まで駆けあがって登っている。97年のときは無風快晴の好日、山頂で山村さんが鮭の粕汁を作ってくれたのが忘れられない。長沢君の車で楽をした3度目の蛾ヶ岳では陽は差すものの寒い一日で、南アルプスは雲に隠れていた。

中 蛾ヶ岳の織内さん。織内さんはヘビースモーカーだった。「ちょっと一服」では必ず2本続けて悠揚迫らず。待っているこちらは身体が冷えて、内心、「早くしてくださいよ、織内さん」だった。なお、喫煙ばかりではなく、織内さんはなにをなさるのにも殿様然と時間がかかり、私はよくいらいらしたものである。藤島敏男さんの奥様がそっと声を潜めておっしゃるには「我が家ではミスター・スローモーションとお呼びしているのですよ」。

下 三方分山の手前で写した大八坂の集落。一番奥の稜線の山は竜ヶ岳(左)と雨ヶ岳(右)。

(2013.1)


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