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          長九郎山 2009.2.13



伊豆半島でも南端に近い雲見温泉の朝は、寒い甲州から来た身には驚かされる暖かさだった。薄着でまだ夜明け前に浜辺に出てみた。雲見は西伊豆唯一の北に開けた港で、ゆえに浜辺からの富士山が有名だという。前日の夕方には、そのとおり海の彼方に浮かぶ富士を見ていたが、この朝にはまるで見えなくなっていた。つまり好天は前日で終わったのであった。

朝から魚を食べていざ出発。長九郎山の西の山中にある富貴山宝蔵院へ車を走らせた。ほぼ1000mの長九郎山は甲州の1000mとは違って、麓から歩けば掛け値なしの1000mである。そのおよそ半分まで車に登ってもらう。

弘法大師ゆかりの古刹までは立派な車道が通じ、境内のまわりも公園として整備されているが、オフシーズンでは1台の車も停まっていない。寺への参道には、苔むした石仏がずらりと並び、壮観である。説明書きによると、その数120体におよぶとか。

霧のただよう中、長九郎山へと向かう道を歩き出した。ところがこれが中々の難物、なるたけ坂を登らせまいとする心遣いか、ひたすら山腹を巻いて続く。およそ1時間あまりもまったく風景の変わらない杉林の中というのも前代未聞だが、さすがに伊豆の山だという感じはする。

頂稜に至って、はじめて原生林の中を歩くことになった。ヒメシャラの明るい幹の色が霧の中に浮かぶ様は、なかなか幻想的。まるで植えられたかのようなアマギシャクナゲの林が続く。花期にはかなりの人出となるのだろう。

変化が乏しく長い道に、これは「長苦労山」との言葉も飛び出したが、さもありなん。やっとたどり着いた、展望が得られるという頂上も霧の中とあっては、今ひとつ楽しめなかったが、それはそれ、あとになるとこんな山が印象深く思い出されることはよくあるものである。

同じ道を戻って、再び嫌というほど杉林を見、駐車場に戻った。しかしそこからがまた長かった。2時半に駐車場を出発、山から海辺へ下って海岸べりをひたすら北上したのち土肥からまた山へと上がり、渋滞の三島と裾野市街を抜け、途中風呂に入って、やっと北杜市に戻ったのは夜の9時。やはり南伊豆は遠いわいと思ったことだった。

(2015.3)

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