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       前三ツ頭〜十二山尾根 2006.10.19



この木曜山行は「材木尾根下降」という名目で募集していたのだったが、それがまるっきりこちらの思い違いだとわかった。

山口耀久氏の『八ヶ岳挽歌』(平凡社)の「権現岳」の項にある材木尾根と、同氏のガイドブック『八ヶ岳』(朋文堂)にある、前三ツ頭から派生する高川左岸尾根の記述が私の中で勝手に結びついて、高川左岸尾根を材木尾根と思い込んでいたのだが、この日の参加者Wさんが持ってきた、八ヶ岳の石造物の研究者北村宏氏の略図を見て、その間違いに気づかされたのであった。

それによると、材木尾根は前三ツ頭から天女山に下る尾根を少し降りたところから南に派生する顕著な尾根で、私が材木尾根と思っていた高川左岸尾根は「笹ー尾根(ささくらおね)」となっていた。

あらためて私の持つ『日本山岳案内12』(鉄道省山岳部編、博文館)を調べると、前三ツ頭から南下する尾根は、西から「十二山尾根」「大日向尾根」「中尾根」「御神楽尾根」「御題目尾根」そして天女山へ通じる現在の登山道の通じる尾根、とある。「題目尾根」はすなわち「材木尾根」である。

よって、尾根の名前を鉄道省の本に準拠すれば、この高川左岸尾根は「十二山尾根」ということになる。「笹ー尾根」は武田久吉の『明治の山旅』の権現岳紀行に出てくる名称である。地名の異同はよくあることだが、ここでは十二山尾根としておこう。

トップの写真で前三ツ頭から左に長く引いた尾根がそれで、材木尾根はそのわずか下から正面左に下りる、ところどころ赤茶けた火山砂の見える尾根、一般道は右に下りる尾根である。

八ヶ岳には火山のわりには火山砂の斜面が少ないが、このふたつの尾根ではそれが見られる。八ヶ岳最大のナギは青ナギだというが、ここのほうがよほど大きく思える。もっともそれらしい名前はない。

この10日後、材木尾根も降りに行ってその良さに感激し、それからは前三ツ頭から天の河原への一般道を降る気はしなくなった。道がないのが不思議なくらいの、八ヶ岳広しといえども最高といっていい下山路である。

(2015.2) 木曜山行報告へ

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