福生里小倉山(塩山

玉宮ザゼンソウ公園に行ってきたと風路さんに聞いて、久しぶりに小倉山に行ってみてもいいなあと考えた。木曜山行で登ったのは、『山梨県の山』が出版されて、そのお祝いをこの頂上でしてもらって以来だから16年ぶりとなる。最後に歩いたのは11年前の冬で、ずいぶんとご無沙汰したものである。

実のところザゼンソウにはほとんど興味がないから、なにも一年でもっとも人出のあるときに出かけなくともいいようなものだが、自分以外の人はその時季がいいに決まっているだろうから、たまには世間に迎合することにしたのである。そのおかげで、山中では木曜山行で出会う一年分以上の人数とすれ違ったのだった。

ザゼンソウ群落地から小倉山に登るだけならあまりにも短いので、いつもどおりに上条峠経由で周回することにした。ちなみに上条峠への山道はこのコースで白眉の樹林の良さで、新緑の時季はことに美しい。

峠道の良さは変わっていなかったが、そこに至る道沿いの山の斜面はすっかりソーラーパネルの畑になっていた。小倉山の展望台はかなり老朽化して、上のたわらさんの写真に欄干に何人もが寄りかかっているのがあるが、そんなことをしたら欄干もろとも全員落下するだろう。さらには周囲の木々が育って、もはや展望地とはいえなくなっていた。

ザゼンソウはまだ最盛期には早い様子で、たくさん出ていはいたが苞は小さかった。

粟倉山(切石・身延)

身延クラフトパークの駐車場、真っ青な空に身延山と粟倉山が並んでいる。身延山に較べると粟倉山はぐっと低くて手を伸ばせば頂上に届きそうなくらいである。よし、さっさと登って、余った時間でクラフトパークをゆっくり見学するもよし、どこかの温泉にゆっくり浸かるのもよし。

なんていう甘い考えは山への取り付きで早くも打ち砕かれた。利用するつもりでいた、地形図にある上粟倉への破線路は痕跡が残っているには残っているが、山の斜面をトラバースする部分ではところどころで通過するのがはばかられるような崩れ方をしており、それではと尾根に登れば木の根の張り出したやせ尾根の急登で足場はすこぶる悪い。

行きつ戻りつを繰り返し、やっと傾斜が緩い尾根に出たらしばらくは安泰だったが、頂上直下の杉の植林地での急登には苦しめられた。むろん径などはない。だが昼をとっくに過ぎてたどり着いた頂上の雰囲気はよかった。東側は植林で眺めはないが、西側は広葉樹で、枝越しに笊ヶ岳など南アルプスの前衛峰がずらりと眺められた。自分の住処より低い頂上だというのに深山に分け入っている気がするのは南アルプスの圧のせいだと思う。

頂上から南に下り、最低鞍部から峠道を妙見寺へ下ればうまい周回コースになるという目論見だった。しかし、それまでの山の状態から、峠道の破線路が山腹をトラバースしている部分が怪しいかもしれないと考えていたのが的中、径はほぼ崩れていた。短い距離ではあろうが傾斜のきつさからとても無理はできない、それでもなんとか突破できないものかと、身延山側へ急登して尾根の頭からの下降を試みたがやはり危険と判断、とにかく下界にできるだけ安全に出ることが肝要と、まったく方向違いではあるが差越(さしこし)に下ることにした。差越までは舗装路が通じていることは調べてあった。

差越までの峠道もはっきりしているとは言い難いが、送電鉄塔巡視路を兼ねているので、それらしい整備がところどころにされていて、さほどの苦労はなく、家が2.3軒残るだけの差越集落へ出た。新しい家もあるが人けはない。常住しているわけではなさそうだ。

もうかなり足が疲れていた。こんな山奥でも携帯が通じたので、角瀬のタクシー会社に電話すると、とてもそこまでは行けないという。集落のあたりは道もわりと広くて、これなら問題なく車が入れそうだと感じたので電話したのだったが、結局、早川べりの県道まで歩いてみて、タクシーが来たくない理由はわかった。舗装こそしてあるものの、道幅は狭く、傾斜はやたらと急で、落石はゴロゴロ、ガードレールから下をのぞくと谷はおそろしく深い。自分だってこんな道を運転したくない。

普通ならこんな山奥にタクシー会社などないが、角瀬に七面山参拝者を輸送するジャンボタクシーを持つタクシー会社があったのは幸運だった。全員が乗り込んでクラフトパークに帰還、一件落着となった。

富士川流域の山はあなどれないとは前々からわかっていることだったが、あらためて身に沁みた。
浅間山~桜峠(市川大門)

この時季の浅間山は一昨年去年と歩いていて、さすがにもう今年はと思っていたが、遠路名古屋や神戸から参加の方々が軽い山歩きをというので、じゃあ今年も行くかとなったのである。初めてで、しかも遠来の人なら絶対に楽しめる、いかにも甲州の春らしい低山歩きである。

おとみ山や名古屋のNさんは3年連続となるのだが、それでも行こうというのには花より団子の気味があって、要するに上物のノビルのお土産や、ゴールがみたまの湯で、下山後間髪を入れず湯舟にドボンという楽しみが待っているのである。

先週の粟倉山の帰りにもみたまの湯に立ち寄ったが、周辺の桜はまだ半分つぼみだったのが、この1週間で一気に満開になっていた。桃も5分咲きくらいになっている。

お目当てのノビルはちょっと早くて、去年の半分くらいの大きさにしかなっていなかった。そのかわりには桜峠の桜が満開で、文字通りの桜峠が観られたのは初めてのことだった。団子よりは花の山歩きとなってしまったとはいえ、小さいながらも収穫したノビルを肴に夜は一杯やったのは言うまでもない。

片山から緑ヶ丘スポーツ公園へ(甲府北部)

この4月はいろいろと支障があってまったく山には行けなかった。下旬になって初めての山というわけだが、毎年恒例の甲府の北山で新緑を楽しむのも時期的にはそろそろ終わりに近い。

数年前のほぼ同じ日に片山の山桜が満開だったことがあって、あれがもう一度見たいなと、去年の紅葉見物のときに初めてたどって気に入った、北側からの登路を使って再び登ってみることにした。しかしそれだけではいささか短い行程なので、白山も越えて緑ヶ丘スポーツ公園まで下ることにした。そうすると、シロイワカガミはきっと咲いているだろうし、さらには一昨年見たキンランもひょっとすると見られるかもしれない。

今年の桜は開花と同時に一気に満開になった。芽吹きもどうやら似た傾向で、車窓から見る片山は輝くばかりの新緑とはいっても、すでに少々色が濃い。ところどころに混じるはずの山桜の白はまったく見えなかった。

片山に登る人でもこの道を登ろうとする人はまずめったにいないだろうという北側の登路である。頂上に着くまでひとりにも出逢わなかった。予想どおり山桜はすでに葉桜だったが、カエデは今しも新緑の盛りだった。夜半まで降っていた雨が塵を洗って、見おろす甲府の街も富士山もくっきりとしている。

白山の北斜面のシロイワカガミは最後の花が残っているだけだった。ま、これも見られただけ良しとしよう。そして、去年も同じ場所に行ってみたのだが見ることができなかったキンランが一輪、しっかり花をつけていた。周囲にはまったくなく、たった一輪だけあるのは不思議なことだが、自分の長い山歩きの歴史で、ここだけでしか見たことがないのだから貴重ではある。また来年も咲いてくれるだろうか。

今年はじめて汗らしい汗をかいて戻った緑ヶ丘スポーツ公園は初夏の陽気といってよかった。

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