持栗沢山~八子ヶ峰ノ原(蓼科山

諸事情があって、この6月に歩いたばかりの持栗沢山と八子ヶ峰ノ原をまた歩くことにした。白樺湖からタクシー会社がなくなってからだろうか、八子ヶ峰西峰から西側の縦走路からめっきり人影が消えた。登山道の刈り払いも久しくされていないのだろう、すっかり笹がかぶっているところもある。

したがって静山派としては好都合で、ごく軽い山歩きをしたいときには何度も使わせてもらっている。誰もいないうえに山好きなら狂喜乱舞の大展望が得られるのだからすばらしい。

台風の影響が心配されたが、北アルプスや浅間連山の上はすっきりとした青空で、南側の山々にも雲がまとわりついて、この景色を見慣れた者には変化があってむしろ面白かった。

もとより八子ヶ峰ノ原でのんびり昼飯でも食べようじゃないのといった行程である。あの山は何だろうと言っては休み、ベンチがあれば休み、とにかく休み休みで3時間、やはり誰にも逢わぬまま、大展望といい空気と、ついでに食事で満腹になった。

諏訪隠(霧ヶ峰)

さて今週はどこへ散歩に行こうかと考えて、この冬に行って途中で撤退した諏訪隠を思い出した。

諏訪隠の名前は私の持っている少々古い昭文社の地図による。この地図の霧ヶ峰付近は手塚宗求さんの監修で、彼の著作によると、現在、車山スキー場になっている斜面から白樺湖にかけての大草原をそう呼んだらしく、山の頂上を指すわけではないらしいのだが、地図の記載からここではその小ピークを諏訪隠としておく。幸いにも道標がないので訪れる人は稀で、一本の木もない草山からの眺望は絶佳である

スキー場まで車を使えばものの15分で達してしまうが、それはいずれ最後の手段として、前回と同じく白樺湖畔を出発点とした。ビーナスラインから下部の道形ははっきりとしないが、雪に較べればススキを分けて登るくらいは何ということもなく、前回の半分の時間もかからなかった。

地元を出るときには空に青い部分はまったくなかったのが、白樺湖に着くころにはまずまずの天気になっていた。昼前に着いた頂上で四囲の眺めを楽しみながら1時間近くを過ごした。むろんその間、ひとりもやってこなかった。
カボッチョ大下降(南大塩)

この6月にカボッチョを歩いたとき、南の眼下の茅野市街へ続く稜線を歩けば気分良かろうとあらためて思った。カボッチョの東にあるカシガリ山と、西にある池のくるみから派生する稜線は何年か前には歩いていて、カボッチョから南に派生する稜線だけが未踏だったのである。カボッチョに20回近くの登頂を誇るドン・カボッチョとしては画竜点睛を欠く。

前2者に較べて、カボッチョのみが頂上から南側に広大な草原を持ち、下から登ってくるなら、徐々に樹木がなくなり、草原へ飛び出したときの解放感はいかばかりだろうかと想像できるのである。

自分の体調のこともあって、今年の木曜山行は中信高原に出かけることがとても多い。今週は名古屋のNさんが来てくれるというので、よしそれでは今年の中信高原探索の集大成としてカボッチョの懸案を片付けてしまおうと思った。しかし、いかに気分が良かろうとも下から登るのでは今の体力では不安がある。いずれは登ることもあろうが、今回はまず下降してみることにした。体力は要らずとも、ルートファインディングは下るほうが難しい。

前日の大雨が笹の葉に残っていて、カボッチョに登る間はズボンの裾を濡らしたが、カボッチョ南の大斜面を下るころにはすっかり草原は乾いていた。雲がまだ山々にまとわりついてはいるが、それが刻一刻と形を変えるのが面白い。遠くには富士山が頭だけを見せていた。

方角を慎重に定めて顕著な稜線に乗るころにはあたりは美しいミズナラの林になっていた。鹿のものであろう踏跡は、場所によっては人の踏跡にも見える。霧ヶ峰は古くから利用されてきた山で、頂上の草原も自然にできたわけはない。したがって、麓からの主な稜線には人馬が登って来た道があったはずで、昨日の稜線にも下るにしたがってそんな痕跡が濃くなっていった。

山を歩いていると、稜線の突端に神社があることが多い。山に仕事に入るときに、まずは神社にて一礼といった風習があったのだろう。昨日の尾根の突端には十五社という神社があって、我々は裏側から首尾よく辿り着いたのち、振り向いて無事を感謝して一礼した。

柳沢峠~三本木の頭(柳沢峠)

5年前の秋、大沼沢の頭に登った帰り道、柳沢峠まで稜線伝いに歩いてみた。三本木とか三本木の頭と呼ばれる小ピークを越えていったのである。

それが好印象だったので、久しぶりに訪れてみることにした。まったく同じコースでもいいのだが、沢沿いのヤブはちょっと手ごわい。そこで柳沢峠東側の水源林歩道と組み合わせて美しい森をのんびりと徘徊することにしたのである。

水源林歩道はそれはそれで美しい林を行くすばらしい道だが、道をはずれても自由に歩けるところが多くある。要するにヤブがなく地面が柔らかい。

勝沼で東京や神奈川の3人の女性と合流、山旅号はにぎやかに青梅街道を登った。この20年続いた国道の工事もついに完成していて、初めてくぐるトンネルの先ははや柳沢峠であった。ヘアピンカーブの連続した峠道はもはや昔話である。

標高的にはもう紅葉の盛りでもいいわけだけれども、今年は全般に色が悪いように感じる。9月の陽気が災いしているのだろうか。ま、それはそれで水源林は相変わらず美しい。いい季節だから歩いている人があるかと思ったら誰もおらず、結局最後までひとりにもすれ違わなかった。

展望台で多摩水源の山々の眺めを堪能したのち、六本木峠から歩きやすいところを適当に登って三本木の頭に着いた。今日の最高点なので、ゆっくりと昼食タイムとした。枝越しに大菩薩嶺の黒い巨体が見えている。

ここから柳沢峠までは5年前にはなかった鹿柵が延々と続いていたのには少々興ざめしたが、少なくとも道に迷うことはなくなったとはいえよう。次には新緑の頃にでも歩いてみたい出色の森である。

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