瑞牆山麓徘徊(瑞牆山

毎朝の犬の散歩でも日に日に緑が濃くなっているのがわかる。一日置いてほぼ同じコースをたどった瑞牆山麓でもあきらかに季節が進んでいた。

下界が30℃にもなろうという日、しかし歩き出しが1300mを越えていれば林に吹いているのは、だたたださわやかな涼風である。それでも半そで一枚で充分な陽気ではあった。

一昨日とまったく同じ行程でも芸がない。地形図上に見つけた小さな突起を目標とすることにした。等高線を読むに標高1545mくらい、立派なものである。どんな小さなピークでも周囲から多少なりとも高ければ山の一種である。昨日は遠望もあったから、芝生広場にも立ち寄って四囲の景色も堪能したのち目標のピークに登った。

ちょうどそこで昼となって、枝越しではあるが、ぐっと近くになった瑞牆山の奇観を眺めながらゆっくりと過ごした。適度に広くて明るくて、目障りな目印がなにもなくて、つまりは私好みの頂上であった。

帰りは一昨日とほぼ同じ尾根筋を下ったが、これは芸のない話だった。広い旧松平牧場をもっと彷徨い歩く方法があったように思う。次の機会があればそうしたい。

一昨日はすがぬまさんととふたりだけだったから「瑞牆山麓スケッチ彷徨」としたが、今回は「瑞牆山麓逍遥」か。しかしちょっとカッコよすぎるな。年齢的には「瑞牆山麓徘徊」が適当か。

八千穂高原コゴミダイレクト(松原湖)

今年前半は木曜日の天気のめぐり合わせが良かったが、徐々に周期が変わって来たようで、今週は木曜日だけが悪天予報、早いうちに水曜日に変更したら、遠路名古屋のやまんばさんとHさんがおいでになることになった。

水曜日は私が午後に茅野で所用があるので、あまりゆっくり山歩きをしていられないが、予定の八千穂高原散策なら麦草峠を越えれば、帰名するにも茅野駅が近くて好都合である。

去年一昨年と八千穂高原山菜ツアーをして、山菜だけでは時間がつぶせないから、それなりに歩くようにコースを設定した。今年は午前中にはだいたい終わりたいので、山菜ダイレクトツアーとすることにして地図を眺めた。

ところが現地に行ってみると、ここから入ろうと思っていた場所は伐採作業の重機が動き回って、丸太が積み上げられており、そんなところを歩くのは閉口である。そこで急きょコースを変更、といっても少々横にずれるだけだが、このルートが出色で怪我の功名になった。

ちょうど八千穂高原は新緑がもっとも美しいころで、何よりそこら中でミツバツツジが咲いているのがすごい。今年はどの山に行ってもミツバツツジを見なかったが、八千穂高原に集結していたとは知らなかった。このあたり、白樺林の林床を埋めるレンゲツツジはつとに有名だが、どう見てもミツバツツジのほうが清楚である。

各色の緑がせいぞろいして、ツツジの薄紫が文字通り花をそえる。これぞ新緑の山歩きである。今年最高といってもいい緑を満喫した。コゴミの収穫も絶好調、おなじコゴミでもここのは物がいい。さらには今年は最上級のワラビもたくさんあって、ほくほく顔で山を下った。

道中の車窓からは山岳展望もたっぷり楽しみ、短い山歩きではあったけれども、遠路名古屋からおいでになった価値はあった。帰名してからは山菜パーティになったことだろう。
持栗沢山~八子ヶ峰ノ原(蓼科山)

水曜日より木曜日のほうがむしろ青空になって、前倒しにする必要もなかったが、天気予報がコロコロと変わるのだから仕方がない。より天気の良さそうな日を見計らって出かけるのが山では鉄則である。

そろそろ八子ヶ峰のズミも見頃かなと思って出かけたが、まだ少し早かったのと、そもそも今年はズミの花が多くないように感じる。

ともあれ、ビーナスラインを上がっていく車窓からだけでも、すばらしい緑の色にはうっとりとする。徐々に標高を上げて毎週のように新緑を楽しんでいるわけだが、きれいなものは何度眺めてもいい。

八子ヶ峰西部の秘境?は持栗沢山と八子ヶ峰ノ原で、いずれも私が便宜上そう呼んでいるだけである。去年、このふたつを結んで歩いてみて、これは展望を楽しむ散歩コースとして第一級だと思った。なにせ全コースを通じて展望がない部分はほとんどないのである。

八子ヶ峰西部は東部に較べると人影が少ない。八子ヶ峰ノ原を訪れる人なんてなおさらまずいないから、ゆうに野球場くらいの広さはありそうな原っぱを二人じめして昼飯を食い、ゴロゴロと過ごした。遠望こそきかなかったものの、まずまずの天気で、涼風に吹かれ、おおいに生気を蓄えた。

八子ヶ峰(蓼科山)

かつてはスズラン峠から白樺湖へと歩いていた八子ヶ峰だったが、10年前に東急リゾートからのルートがあるのを知ってからは、あらゆる点で前者より格段に優れたこちらのコースばかりをもっぱら歩いている。周回ができるのでマイカー登山に最適だし、展望はいわずもがな、プロローグとエピローグに美しい樹林帯があるのが小粋である。

その樹林帯の新緑がもっとも美しいのが6月で、山腹を点綴するカエデの蛍光色のような緑は目が覚めるようだし、芽吹きの遅いミズナラもすっかり緑陰をつくっている。さらにはズミの花盛りも重なって、得も言われぬ高原情緒である。それらを見たさに毎年のように訪れている。先週は八子ヶ峰の西部を歩いたので、今週は東急リゾートコースを歩いて合わせ技一本にしようと考えた。

今年はどこでもズミの花付きが悪いが、どうやら遅霜のせいだったのではないかと思う。それでも木によっては花が多いのもあって、そこそこ楽しめた。レンゲツツジもちらほらと咲き始めている。下界は真夏のような陽気となれば高原の果てには雲が湧き、北アルプスまでの遠望こそきかなかったものの、美ヶ原あたりまでは見えたし、陽ざしはまだ柔らかく、涼風のさわやかさは初夏そのものである。ここでの展望の主役蓼科山は最初からどっしりと近くにあって、西峰から下るころには南半が隠れていた八ヶ岳もほぼ全部が姿を現した。

最高の季節だというのに、たったひとりのハイカーとしかすれ違わなかったのはウイルス騒ぎのせいか、そうだとすれば何とももったいない話である。こういった大気や風景の中を歩けば疫病など退散すると信じている人からは、実に退散するのである。

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