弓射塚~野尻草原(鳴沢

この週の日曜日に横浜YYさんたちと三湖台に行ったとき、紅葉に関しては見るべきものがなかった。足和田山から三湖台へ縦走するつもりだったが、樹林の良さがこの山の身上で、それが色づいていないのなら面白くない。

そこで、どうせ富士五湖地方まで足を延ばすなら、大室山周辺の富士の側火山でまだ登っていなかった弓射塚に行ってみることにした。先回の片蓋山同様、それだけのために出かけるにはもったいないが、野尻草原散策を加えるなら行く価値がある。

前々日の冷たい雨が富士山では当然雪なので、さらにそれらしくなった富士が眺められたら御の字だが、現地へ向かう車窓からは残念ながら雲に隠れていた。

何度か行くうちには現地での土地勘もでき、弓射塚へも簡単に登ることができた。針葉樹の多い林だが、中に混じる広葉樹はそこそこ黄葉していて、ちょうどいいときに来たと思った。適当に山腹をジグザクに登って、頂上近くなると、作業車が入れるほどの道に合流し、最後はそれをたどって頂上に達した。要するに植林のための道だろうから、その結果原始的な雰囲気には欠ける。

氷池と地図に記載のある火口は、想像していたより深かった。火口底は狭く、苔むした大岩が堆積しており、大室山や片蓋山のそれのようなくつろげる雰囲気はなかった。大きい火口だけ探って、小さいのは上から眺めただけだった。

火口の淵で昼を済ませたあとは、緩い傾斜を適当に下って野尻草原へ向かった。数か月前の伐採で途中からは大室山や片蓋山が良く眺められた。

野尻草原に入ると、幸運なことに背後にのそっと富士が現れた。ススキをかき分けて自由に歩く気分はなんともいえない。明るい草原のすぐ脇には暗い樹海が迫っているのが面白い。おとぎ話に出てくるようなところだとは以前にも書いたように思う。今年初めて足を踏み入れて以来、ここを歩くのはもう3回目だが、この対比は何度見ても感動する。また違うルートで歩いてみたいと思う。

御坂黒岳(河口湖西・河口湖東)

名古屋のやまんばさんが遠く岡山からのお客さんを連れてきてくださるという。そこで、できれば富士山が近くに望める山に行きたいというので、今週の木曜山行は大石峠から新道峠への縦走だったから好都合ではあった。

ところが今週は軽い山にしたいという希望が多かった。ならば予定の縦走の累積標高差700mはちょっときついかと思った。そこで代案として考えたのが北側からの黒岳であった。これなら標高差もたいしたことはないし、ブナやミズナラの樹林の雰囲気が格別で、今年の遅い紅葉ならまだ楽しめそうだし、何より、頂上に至って初めて富士の大観にまみえる演出効果がすばらしい。そして、そのすべてがピタリと決まったのである。

問題は天気だったが、この秋どころか今年になって初めてかといっていいような好天続きで、山中のみならず、行き帰りの車窓からも山岳展望を満喫したのだった。黒岳からの富士山なんぞ何を今さらというのが、この近所で長年暮らした私の悪態で、しかしそのわりにはせっせとシャッターを押しているのだから何をか言わんやというところだが、それが富士山の富士山たる所以であろう。
棚山(塩山・甲府北部)

山梨市駅前から棚山はもっとも目立つ山と思えるが、ずっとマイナーな山だったのは周辺に有名な山が多い甲州ならではであろう。ほったらかし温泉が人気となって、そこからの道が整備されてからは人の訪れも多くなった。頂上も伐採されて東西の眺めも良くなって魅力も増した。私のガイドブックでも新版になってから取り上げている。

木曜山行では、まだこの山が好事家向きの頃から藪を漕いで登っており、夕狩沢から、太良峠から、そしてほったらかし温泉から頂上に達しているので頂上自体に新味はない。

数年前に八幡山に登った帰り、兄川沿いの車道脇に地元の人が造った山案内の看板を見つけた。それによると仏沢と友沢に歩道が整備されていて、どうやらそれを利用するなら棚山まで登れるらしい。そのことが頭に引っ掛かっていたのが昨日の木曜山行の計画となった。

いつ頃整備されたものか、登路に使った仏沢の径は踏跡同然のところもあった。あたりは杉や檜の植林地なので暗い。その暗い林の中に大岩が点在しているのが珍しいというので歩道が整備されたらしい。

途中で出会った古い踏跡をたどって尾根に出ると、ようやく明るい秋の山になって、黄葉紅葉の混ざった雑木林を気分よく登っていった。枝越しに棚山がやたらと高く格好良く見える。太良峠からの一般道に出たところはすでに棚山より高い。すなわち棚山へはいったん下ったのち登り返すことになって、これがなかなかの苦労で、それを行き帰りに繰り返したことになる。

正午をとっくに過ぎていささかシャリバテ気味で頂上に到着、甲府盆地側の眺めを楽しみながらのランチタイムになった。その間、母子連れが一組、ほったらかし温泉から登ってきたのみ、聞けば埼玉県民の日で学校が休みなので遊びにきたとか。

帰りは仏沢の南の友沢へ下るつもりだったが、途中にあった倒れた道標で早合点して、さらに南の神峰沢に下ってしまった。途中で気づいたときには手遅れで、駐車場所へ戻るのに少々時間を食った。結局、友沢の歩道を歩きそこなったので、今度はそっちから登ろうと提案すると、賛同する人は皆無であった。ちぇっ。

駐車場完備だし、ちょっと手ごわいルートで棚山に登りたい人にはお勧めである。

大城山~鶴ヶ峰(辰野)

大城山へは数え切れないほど登ったが、鶴ヶ峰へは一度失敗し、
https://yamatabi.info/2015b.html#2015b4
同じ年にやっと宿願を果たした。
https://yamatabi.info/2015k.html#2015k1
このときにも書いたことだが、車で行ける山を歩く価値のある山にするには工夫が必要で、思いついた周回ルートはわずかながら藪こぎもあるものの、まあ上出来だと思った。

そのときには今一つの天気で、これが晴れていたら最高だったのになと思った。またいつかはと思っていたのが、すでにそれから4年もたっていたとは驚きだった。とにかく歳月がたつのが早い。

天気ばかりは運しだいだが、願ってもない好天となった。めったにない好天だというのに参加者がふたりだけだったとは寂しい話、地元からはおとみ山だけで、名古屋のNさんとは現地にて合流した。

前回と同じルートで大城山に這い上がり、まずは伊那谷を俯瞰した。ぽかぽかと暖かく、こんなところでゆっくりしているともう動きたくなくなってしまう。

ゼロポイントと日本中心の標の分岐には数々のややこしい表示があるが、鶴ヶ峰とはまったく書いていないのだから不親切というもの。「鶴ヶ峰(日本中心の標)」とでも書いておけばわかりやすいのにと思う。ま、そもそもその中心の基準がよくわからない。

分岐から先は倒木で荒れていた。歩く人も少ないのだと思う。林道に出たら、あとはぶらぶらと鶴ヶ峰まで歩くのみである。幸いにも車に出会うこともなかった。

鶴ヶ峰は展望台がなければ何も見えない場所で、本来なら北の1291mか南の1277mの峰の頂上を伐採して展望が効くようにすれば観光資源としての価値はかなりのものだろうと思う。それはともかく展望台に上ればそこからの眺めはすばらしく、それは山の位置からして当然で、昨日は車で来る人もおらず、展望台を独占して1時間あまりも山座同定を楽しんだ。戯れにざっと数えると、23座もの日本百名山が指摘できたのだからたいしたものである。

帰りは古刹七蔵寺を経由したのは前回と同じだったが、こんどは尾根伝いに裏手から入ったので、前回は見落としていた100体はあろうかという観音像を見ることができた。26本あるというカエデが葉を落としたばかりで、黄色い葉の敷き詰められた境内は、晩秋という季節の雰囲気とあいまって、寂れの美とでもいえばいいか、今回の山旅に、展望だけではない深い印象を残してくれたのである。

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